精神障害を理由に議会の傍聴を制限する条項が、熊本県内自治体議会の傍聴規則に6月まで残っていた。宇土市と益城町で、県の見直し依頼を受け、7月3日までに関係条項を削除した。全国市議会議長会などによると、条項の見直しは1970年代には全国的に始まっていた。両市町では放置されていたとみられる。

 規則は、議会を傍聴する際の手続きや守るべき事柄などを定める。両議会では「傍聴席に入ることができない者」として、銃器など他人に危害を加える恐れのある物を携帯している場合や酒気を帯びている人などのほか、「精神に異常があると認められる者」との記載があった。規則は宇土市が1961年、益城町は54年に定めていた。

 県障がい者支援課は、改正障害者差別解消法が2024年4月に施行されるのを前に、6月5日付の文書で「障害を理由とする差別や不利益取り扱い」に当たる制限条項を見直すよう全市町村に依頼した。宇土市と益城町の条項はその時点で残ったままだったが、依頼を受けて益城町は同20日、宇土市は7月3日に削除した。

 両市町の議会事務局は、条項が残っていたことについて、「差別の意図はなかった」と釈明。これまで精神障害を理由に傍聴を断った事例はないとした。益城町の事務局は「これまで庁内での情報共有が十分でなく、昔の条項が削除されないまま残っていたと思われる」と説明した。

 全国市議会議長会によると、全国の市議会がモデルとする標準傍聴規則は昭和30年代以降に作成。精神障害者の制限条項は当初からあったと思われる。市議会議長会が規則改訂などで参考とする全国都道府県議会議長会が1976年、関係団体の申し入れを受け、同会の標準規則から同条項を削除した。市議会議長会などもこの動きにならったとみられる。

 精神障害者の家族らでつくる県精神保健福祉会連合会の飯塚幸二会長は「昔の規則が残っていたのだろうが、差別に当たると認識してほしい。議会以外にも同様の規則が残る機関もあるので削除を求めていきたい」と話した。(古東竜之介、河北英之、中島忠道)

熊本日日新聞 | 2023年7月13日 08:25
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