2023年11月19日 06時00分
<銃撃の残響 ケネディ暗殺事件60年>㊤
 11歳のアントワネット・グローバーは石の台座の上に立ち、大統領の車列を待ち構えていた。1963年11月22日、米南部テキサス州ダラス。
群衆の中で、グローバーが羽織るライトブルーのジャケットがひときわ目立つ。

 前夜はわくわくして、あまり眠れなかった。第35代米国大統領ジョン・F・ケネディ。史上最年少の43歳で大統領となった若きリーダーは月に人を送るアポロ計画や人種差別の撤廃を訴え、国民を魅了していた。
 グローバーは、ケネディがたくさんの子どもを乗せてゴルフカートを運転する雑誌の写真を覚えている。「大統領は子どもが大好き。もし大統領に私のことを知ってもらえたら、きっと誰も私を傷つけない」



◆11歳 一番目立つ服で石の台座の上に

 そんな「魔法のような考え」を思い付いたのは、威圧的な父親におびえて暮らしていたからだ。かっとなると、飼っていた子猫を殺してしまうような父。
「大統領に会えたら私の人生はきっと変わる」。母親に頼み込み、数時間前から場所取りに並んだ。自分を見つけてもらえるように、一番目立つ服を選んだ。
 午後0時半前。ビルの陰から車列がやってきた。太陽に照らされたケネディはハリウッドスターのよう。隣に座る夫人ジャクリーンと目が合った。
大統領もきっと私を見てくれたはず。「やった! これで私は幸せになれる」。周りの人たちも興奮し、誰もが幸せに包まれているようだった。




◆大変なことが…白黒テレビのニュースに涙
https://www.tokyo-np.co.jp/article/290919