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(※画像はイメージです/PIXTA)

医学が発達していなかった頃、人々は神に祈ったり、呪術などで怪我や病気を治そうとしていましたが、薬草の効果も知っていて治療に用いていたようです。どのような植物が薬として使われ、どのような治療が行われていたのでしょうか

古代遺跡から見つかった薬草
イラク北部にあるシャニダール洞窟からは、約6万年前のネアンデンタール人の骨が見つかっていますが、セイヨウノコギリソウやゼニアオイの花粉も多く見つかっており、これらの植物を利用していたと考えられています。

セイヨウノコギリソウはヨーロッパ原産のアキレア属の多年草で、春から秋にかけて白色または薄紅色のふさ状の花を咲かせます。組織を収縮させる効果があるので、出血を減らしますから、切り傷や擦り傷に草の汁を塗っていたのかもしれません。

属名のアキレアは、ホメロスの叙事詩『イリアス』に登場するトロイア戦争の英雄アキレスが傷薬として利用したことに由来する、といわれています。ヨーロッパでも「兵士の傷薬」と呼ばれ、古くから利用されていました。また、抗炎症作用や抗病原性、抗潰瘍性もあり、今でも呼吸器感染症や消化器疾患、皮膚疾患の治療に使われています。

また、ゼニアオイの花や葉には、粘膜を保護する成分が含まれているので、風邪を引いた時の喉の痛みや腫れを抑えるために利用されていたのかもしれません。現在もゼニアオイの花のエキスは、保湿効果を高めるために化粧品や洗顔料、ボディーソープなどに利用されています。

古代エジプトの薬と治療
紀元前3300年から525年まで続いた古代エジプト文明では、呪術や宗教的儀式で治療を行う面もありましたが、医師もすでに存在していました。エジプトの医師が優秀なことは広く知られており、他の国の王族が治療を求めることもあったようです。

医師はエジプト各地におり、男性医師に関する最初の記録は紀元前2700年に遡り、医師へシーラは王の「歯科医師および医師の長」であったと書かれています。女性の医師に関する最初の記録は紀元前2400年で、女性も医師として活躍していたことがわかります。医師たちは歯科医、肛門科医、消化器科医、眼科医など、各々が専門分の分野で働いていました。なお、肛門科医は「肛門の羊飼い」とも呼ばれていたようです。

紀元前1500年頃に書かれた医学書『エーベルス・パピルス』には、病気を起こす悪魔を退治するための呪文や魔術など約700以上の治療法を記載しています。

患者から寄せられた主な症状は、風邪や消化器系の症状、頭痛だったようで、頭痛には、ミントや雄鹿の角、いちじくの種などを擦って混ぜ合わせ、頭に塗っていました。

また、喘息には蜂蜜と牛乳、ごま、乳香を、火傷や皮膚疾患にはアロエを使っていました。痛みを訴える場合はタイムを、消化器系の問題にはミントやニンニク、白檀、ジュニパーを利用したようです。嘔吐を止めるためにはミントを、逆に嘔吐させたい場合はマスタードを使いました。