イギリス政府が「エビ・カニ・ヤドカリなどの 十脚目の甲殻類、イカやタコなどの頭足類も意識を持っている」という報告を基に、動物福祉(感覚)法案の適用範囲を拡大することを発表しました。この修正により動物福祉(感覚)法案が施行されれば、イギリスにおいてエビやカニ、タコなどを生きたままゆでたり包装して販売したりすることは違法行為となります。

イギリスで審議中の動物福祉(感覚)法案は、「意識を持つ動物を気絶させたり冷凍させたりせず、生きたままゆでたり包装したりする行為」を禁止するというもの。この法案では「すべての脊椎動物は意識を持つ」とされていましたが、一部の動物愛護団体からの指摘を受けて、「無脊椎動物であるカニやエビ、タコなども意識を有しているため、法案の適用範囲に含まれる」という修正案が2021年7月に提出されました。

そして、 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの自然・社会科学哲学センターのジョナサン・バーチ准教授が率いる研究チームは、300件以上の研究を検討し、十脚類と頭足類は意識を有していると判断した上で、動物福祉法案の範囲に含まれるべきだと論じました。

研究チームによれば、十脚類や頭足類は鎮痛物質である オピオイド受容体を有しており、痛覚を有していることが示されているとのこと。また、沸騰したお湯から逃げようとするなどの「身体的暴行に対する拒否反応」は、痛みに対して苦しみを感じる証拠だと研究チームは指摘しています。


バーチ准教授は「今回の法案改正は、タコなどの頭足類が科学的には何年も前から意識を有していることが証明されているにもかかわらず、これまで保護されてこなかったという大きな矛盾を解消することにつながります。イギリスが動物福祉の分野でリードするための方法の1つは、人間がこれまで完全に無視してきた無脊椎動物を保護することです」とコメントしています。

イギリス政府は「動物福祉法案は、背骨を持つすべての動物を『意識のある存在』として認識しています。ただし、他の無脊椎動物と異なり、十脚類の甲殻類と頭足類は複雑な中枢神経系を持っており、これは意識の重要な特徴の1つです」と述べ、バーチ准教授らによるレポートの結果を受け入れる姿勢を示しました。また、「今回の法案改正は、既存の法律や漁業などの業界慣行、貝類の漁獲や外食産業に直接的な影響を与えません」としています。

イギリスの動物福祉大臣であるザック・ゴールドスミス氏は「動物福祉(感覚)法案は、動物の福祉が正しく考慮されていることを保証するものです。甲殻類や軟体動物が痛みを感じることは科学的に明らかであり、この重要な法律の対象となるのは当然のことです」と述べました。

https://gigazine.net/news/20211122-lobster-octopus-crab-sentient-being/