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「関係者の理解も合意もない海洋放出に県は反対すべきであり、設備変更の事前了解に同意すべきではない」と訴える市民団体のメンバーら=福島市で

 東京電力福島第一原発の汚染水を浄化処理した水(処理水)の海洋放出を巡り、市民団体「海といのちを守る福島ネットワーク」は27日、福島県の内堀雅雄知事に対し「県民世論と乖離し、関係者の理解も合意もない海洋放出に県は反対すべきだ」として、放出用の海底トンネルの新造工事に事前了解しないよう求める申し入れ書を提出した。

 団体メンバーは福島市内で会見。佐藤和良いわき市議は「海洋放出には県内の7割の市町村議会が反対または慎重な対応を求めている。県は国や東電に丁寧な説明を求めるだけでなく、公聴会を開くなど県民の声を集約し、国への態度を示してほしい」と求めた。

 相馬市で海産物を扱うスーパー経営の中島孝さん(65)は「10年苦しみ、ようやくという今、海洋放出されたら福島の農業や漁業は終わる。これまでの賠償への姿勢を見て、新たな風評被害が起きても補償されないという不安が自治体の決議に現れている」と指摘した。

 この日、福島県や原発周辺の13市町村の担当者が参加する廃炉安全監視協議会が福島市内であり、東電が海洋放出に向けた設備計画の内容を説明した。

 漁港を抱えるいわき市の担当者は「関係者の理解を得るのが大事で、今はその途上にある。設備の技術的なものだが、十分な理解がないまま手続きが放出に向かって進んでいる印象がぬぐえない。慎重に対応すべきだ」と懸念を示した。(片山夏子)

 東電は21日、処理水を新たに造る海底トンネルを通じて沖合1キロから放出するための設備計画を原子力規制委員会に申請。原発が立地する福島県と大熊、双葉の2町には工事を始めるための事前了解を求めている。

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