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トニー・ブレア元英首相は2022年の新年の叙勲で、「ガーター勲章」を受けてナイト爵となった

2022年の新年の叙勲で「ガーター勲章」を受けてナイト爵となったトニー・ブレア元英首相の爵位を剥奪(はくだつ)するよう求める署名運動が展開されており、これまでに70万人以上が賛同した。

元労働党党首のサー・トニーは、1997〜2007年にイギリスの首相を務めた。

しかし署名運動では、イラク戦争への参戦を決めたブレア氏には多くの死者に対する「個人的な責任」があると指摘。「戦争犯罪」に当たると非難している。

ガーター勲章はイングランドの最高勲章で、イギリスの王族や首相経験者、外国の国家元首などに贈られるもの。

新年の叙勲の大半は首相官邸の助言のもとに決まるが、ガーター勲章はエリザベス女王が選出する。

署名サイト「Change.org」でこの運動を開始したのは、俳優のアンガス・スコット氏。活動ページではサー・トニーについて、「イギリスという国そのものと、社会の基本構造に取り返しのつかないダメージを与えた」と説明している。

「トニー・ブレアはさまざまな紛争における、数えきれないほどの無実の民間人や軍人の死について個人的な責任がある。それだけでも、戦争犯罪の責任を問われるべきだ」

「トニー・ブレアは公に功績を認められること、特に女王陛下から褒章を贈られることから最も遠い人物だ」

署名運動は、左派活動家や反戦運動家を中心に、ソーシャルメディアで広く支持を集めた。

しかしスコット氏はBBCの取材に対し、「現実としては、この署名で女王からのナイト受勲を取り消すことにはならないだろう」と話した。

「それでも、十分な署名が集まれば、この国が民主主義に基づいた国で、権力者は国民の声に耳を傾けるべきという明確なメッセージになるはずだ」

「ブレアは14年以上も公職から離れているが、本当に多くの人が彼の経歴について強い感情を持っているし、そうした声は聴き入れられるべきだ」

政治家の反応は?
ガーター勲章は、女王が自ら最大24人の「ナイトとレディー」を選ぶもの。こうした形で与えられる褒章は、叙勲委員会の一存では剥奪できないことになっている。

最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、「ボリス・ジョンソンは褒章を受ける権利がないと思う」が、サー・トニーはナイト爵を「得るに値する」人物だと述べた。

与党・保守党のマギー・スループ・ワクチン担当政務官はラジオに出演した際、イギリスに「数々の良いこと」をもたらした首相経験者が叙勲の対象となるのは「まったく正しいことだ」と話した。

また、存命の首相経験者4人のうちナイト爵位を受けたのはサー・トニーだけだと述べた上で、残りのゴードン・ブラウン氏、デイヴィッド・キャメロン氏、テリーザ・メイ氏にも「同じように認められるきっかけができた」と指摘した。

サー・トニーは2009年、アメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)から、「国外で民主主義と人権、そして平和を推進した」功績をたたえられ、市民に送られる最高位の勲章「大統領自由勲章」を贈られた。

しかし2016年7月、イギリスのイラク戦争参戦とその後の経緯を調べる独立調査委員会(チルコット委員会)は、ブレア政権が平和的手段を尽くさずにアメリカの主導するイラク侵略に参加したと結論付けた。

また、サダム・フセイン政権崩壊後のイラクをめぐる準備や計画は「まったく不十分だった」との見解を示している。

(英語記事 Petition to block Blair knighthood tops 700,000 )

https://www.bbc.com/japanese/59890614