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紅茶のような色味の糞茶(丸岡さん提供)

 葉を食べるガの幼虫の糞(ふん)を活用した「虫糞茶(ちゅうふんちゃ)」の普及を目指す、京都大の大学院生がいる。原料となる植物や糞を生産する虫の種類によって茶の味や香りが一変するため、これまでに40通りの組み合わせで茶を試飲し、成分を分析してきた。「桜やリンゴ葉はフルーティーな香り。健康茶の側面もあり、製造に熱処理が不要で環境にも優しい」と商品化に向けて日夜、研究を続けている。

 農学研究科修士課程2年の丸岡毅さん(25)=京都市左京区。植物や昆虫を扱う化学生態学の研究室に所属し、先輩の院生が農園から大量に持ち帰ったマイマイガの幼虫を桜の葉で育てていた。2021年5月、試しに乾燥した糞に湯を注いで飲んでみたところ、紅茶のような香りや味がすることに気付き、研究にのめり込んだ。

虫と植物で最高の組み合わせ探る

 虫糞茶は中国の一部地域で伝統的に飲まれており、ガの幼虫に特定の茶葉を食べさせた糞茶は珍重されている。丸岡さんは、より香りと味の良い独自の茶を目指し、各地でさまざまな虫や植物を採取。ナミアゲハやオオトビモンシャチホコなど20種の虫と、トウモロコシやミカンなど17種の植物を用意し、それぞれの幼虫に葉を食べさせて、最高の組み合わせを探ってきた。

 半年間の研究で、特においしいと思える組み合わせが二つ見つかった。リンゴ葉をマイマイガの幼虫が食べた糞茶はリンゴの風味が良く、ドングリがなるアラカシの葉をシャチホコガに食べさせた糞茶は高級な中国茶のような味わい。試飲に協力している研究室仲間にも好評という。

消化過程でうまみや善玉菌増加

 糞茶を化学分析すると、組み合わせ次第で香気成分のクマリンやゲラニオールなどの化合物、茶のうまみ成分であるテアニン、健康維持に有用とされるポリフェノール類がそれぞれ多量に含まれることも分かった。幼虫が葉を食べ消化する過程で、うまみや善玉菌が増えると考えられている。

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