https://futaman.ismcdn.jp/mwimgs/6/f/1456wm/img_6ffcfcf9521b9f582b3915bd49f4083d229862.jpg
画像はビッグコミックス『美味しんぼ』第60巻(小学館)

 グルメ漫画界の伝説的作品『美味しんぼ』(小学館)。東西新聞社で働く山岡士郎と栗田ゆう子が、会社の創立100周年記念事業「究極のメニュー」を通して出会った人たちの抱える悩みを「食」の力で解決させていく物語だ。リアリティあふれる料理の描写や膨大な食の知識、そして、士郎の実の父である美食家・海原雄山との料理対決が本作の見どころ。また「ヒラメがシャッキリポンと舌の上で踊るわ!」といった独特な食レポや、インターネット・ミームとして愛されて続けている「ラーメン三銃士を連れて来たよ」など数多くの表現は唯一無二といえる。

 そんな『美味しんぼ』には「究極のメニュー」に相応しい“美食”が多数登場するが、ときには目を見張るほど奇怪……言うなれば“奇食”が姿を見せることも。そこで今回は、読者を思わず驚かせた食事シーンを紹介したい。

■デパ地下でフルコースディナー
 日本三大ケチと名高い成沢社長と会食の席を設けることになった士郎たち。だが、豪華絢爛な食事を目にした成沢社長は、無駄金を使うなと激高し会食は失敗に終わってしまう。士郎たちは“お金を遣わずに美味しいものをご馳走する”良い手はないかと考えた結果、成沢社長を「辰さんのレストラン」に招待しリベンジを図る。

 実は、辰さんとは銀座の料亭や名店から出るゴミを片づける代わりに、余り物をもらって生活しているホームレス。そんな辰さんによるレストランというのは、デパートの試食コーナーを巡り、無料で美味しい料理に舌鼓を打つというものだった。

 常人離れした鋭い味覚を持っている辰さんは、数ある試食コーナーの中でも美味いものを的確に見抜き、食前酒、前菜、魚料理、口直し……とコースを組み立てながら、成沢社長をおもてなししていく。斜め上すぎる“お金を遣わずに美味しいものをご馳走する”方法に関心する成沢社長だが、彼がここまでケチな理由を知ると本当のお金の遣い方について考え直したくなるので必見だ。

■挑戦して断念した読者も少なくないはず
 海外誌に掲載される、器を中心とした日本料理の美意識について取材協力することになった士郎たちは、杉箸を製造している吉野の工房に足を運ぶ。出来たばかりの杉箸で食事をすることになった士郎たちだったが、雄山が美食家仲間の登田さんを引き連れて登場したことで、その場は一触即発の緊迫した空気に。ちなみに、士郎の行く先々で雄山が現れるのは『美味しんぼ』あるある。

 京料理を堪能する一同だったが、〆に鯛の茶漬けが登場するやいなや鋭い目つきに変わる雄山。さらに息子である士郎が鯛の茶漬けを食べるところを凝視した後、箸の先について少々嫌みったらしく指摘し始める。そんな雄山に対して「ああっ!!俺の箸の先は四センチ以上ぬれているのに、登田さんの箸は一センチくらいしかぬれていない!」とうろたえ始める士郎。雄山いわく「どんなに美しい食器と箸で食べても、食べ方が美しくなかったら何もかもぶち壊しだ」とのことだが、箸をぬらした長さでここまで険悪にならずとも……。

■もはや伝説!「水」勝負
 やがて物語は東西新聞社の「究極のメニュー」、そしてライバル紙である帝都新聞が雄山監修のもと立ち上げた「至高のメニュー」との料理対決へと展開していく。最後にご紹介するのは「水」を題材にした「究極」VS「至高」の戦いで登場した伝説的なメニューである。