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プーチンの「陰謀論」に踊らされる左派系言論人…ウクライナ「代理戦争」論の錯誤と罪悪 [きつねうどん★]
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2022/04/13(水) 06:46:15.99ID:CAP_USER
ウクライナ情勢をめぐって、日本でも様々な議論が巻き起こっているが、だいぶ構図がはっきりしてきたように思う。

国際的な法規範を重視し、日本の国益もその維持にある、と考える人々がいる。しかし世界の諸問題はアメリカの帝国主義によって引き起こされており、日本はそこから距離を置くべきだ、と考える人々もいる。両者の溝は、根深い。他の様々な場面でも、溝は現れてきた。それがウクライナ情勢をめぐっても、やはり噴出してきているのだ。

幸い、日本政府は、国際社会の維持に日本の国益も重ね合わせる見方をとり、同盟国・友好国と協調する政策をとってきている。ロシアに制裁を科し、ウクライナに支援を提供している。私としては、妥当な方向性だ、と考える。今後もこの方向性で努力をしていくべきだ。

ただし、欧米諸国や日本を中心とする国際的な反ロシア・ウクライナ支援の流れに抗する人々も存在する。伝統的な左翼の中核的な勢力の外周に属するような人々が、左翼的な言説を代わりに主張している。

「降伏」論でダメなら「代理戦争」論?
「ウクライナは降伏するべきだ」、「ジェノサイドからなぜ逃げないのか」といった主張を繰り返している橋下徹氏らだ。かつて橋下氏は、改憲論あるいは自己責任論のスローガンで地方行政における改革派のイメージを作って成功したが、国際問題を語るときには伝統的な憲法学通説の世界観に依拠するしかないことを露呈した。

だがさらに由々しき事態は、日ごろからより左派的な立ち位置をとってきた勢力が、陰謀論に加担し始めていることだ。非武装中立・降伏を唱えて物議を醸す代わりに、こうした勢力が強調しているのは、「ウクライナ人はアメリカ人の代理で、ロシアを貶めるために戦争させられている」という「代理戦争」論である。

日本が欧米諸国と決別し、中国とインドとともに仲裁にあたることが、最も望ましいと主張している「和田春樹会員をはじめとする有志による声明『ウクライナ戦争を1日でも早く止めるために日本政府は何をなすべきか』(2022/3/21)」も、同じような考え方をとっていると言える。

もちろんアメリカにはアメリカの国益があり、それは日本も同じだ。だがだからといってウクライナが戦争の当事者であることを否定してみたり、あたかもゼレンスキーはアメリカに騙されているに過ぎない、といった扱いをしてみたりすることには、眉をひそめざるを得ない。

これらの人々は、ウクライナ人に同情している装いをとっているが、ゼレンスキーの言葉のみならず、ウクライナ人の努力や心情を全否定する矛盾を抱えている。ウクライナも、ウクライナの国益の観点から、ロシアと戦っており、支援を求めている。当然のことだ。諸国は、その説明を聞き、国際秩序の維持という公益ともあわせて、ロシアを非難し、ウクライナを支援している。

さすがに真面目に国際政治や国際法を勉強したことのある人物で、こうしたむき出しの反米主義にかられた「代理戦争」論を口走っている者はいない。しかし日本社会に存在する反米主義に感情的に訴え、世界のあらゆる問題はアメリカの陰謀によって発生しているという安直な思考回路に陥る人々が後を絶たないのは、憂慮すべき事態ではある。

プーチンに踊らされる陰謀論者
プーチン大統領は、ウクライナはロシアの一部だ、といった民族主義的なイデオロギーとともに、アメリカがロシアを追い詰めようとしている、という陰謀論イデオロギーも、繰り返し用いてきている。

その際にプーチン大統領がよく参照するのは、自らも現場での経験を持つコソボ紛争であり、アメリカの単独行動主義が極致に至ったイラク戦争であったりする。いずれも国際法上の合法性が争われた事例であり、特に後者のイラク戦争については、国際法違反行為であったことについて広範な理解がある。私自身も、2002年から03年にかけた米国における在外研究中には、イラク戦争に反対するデモに参加したりしていた。

しかし今回のプーチンのウクライナ侵略行動は、その明白で深刻な国際法違反の度合いにおいて、メガトン級である。いかなる過去の事例も、今回のプーチン大統領の行動を正当化できないし、言い訳にすら使えない。実際、開戦理由や開戦後の蛮行について、ロシア政府は正面から説明することができず、全く支離滅裂な責任逃れの態度しかとれていない。

それにもかかわらず、常に一番悪いのはアメリカだ、と言い続けるのは、ウクライナの人々にあまりに失礼だろう。これまでプーチンが苛烈な軍事行動をとってきたチェチェン、ジョージア、シリア、あるいは軍事会社ワグネルが暗躍している中央アフリカ共和国やマリなどのアフリカ諸国の人々に対しても、同じように失礼である。
0002きつねうどん ★
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2022/04/13(水) 06:46:40.34ID:CAP_USER
それでもアメリカ陰謀論者は、ウクライナはアメリカの帝国主義の犠牲である、という世界観を頑なに信じ続ける。いくぶんかでもその背景に真面目な議論の対象になる論点があるとすれば、NATOの東方拡大であろう。

反米的な陰謀論者は、NATOの東方拡大は、アメリカの帝国主義的野望の表れだと考えがえる。そして、アメリカもまた帝国主義者なのだから、「どっちもどっち」だ、という結論を導き出そうとする。

だが果たしてNATOの東方拡大は、プーチンのウクライナ侵略と同列で論じられるべき出来事だろうか。

20世紀における国際法の構造転換
第一次世界大戦が終わったとき、ドイツ帝国、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国、そしてロシア帝国が崩壊した。東欧を取り囲む帝国群の解体という大変動を処理するため、アメリカのウッドロー・ウィルソン大統領は「民族自決」を唱えて、パリ講和会議に乗り込んだ。東欧に秩序をもたらすためには、帝国群の支配下にあった民族に、独立国の地位を与えていくしかない、という考え方であった。

この新しいヨーロッパの秩序を守るために設立されたのがベルサイユ講和条約と同時に設立された国際連盟であり、さらにそれを法体系の面で裏付けるものが1928年不戦条約であった。

このとき「国際法の構造転換」とも言われる劇的な国際秩序の変化が生まれた。それまでは主権国家が正式に宣戦布告すれば合法的に開始できるとされていた戦争は、違法な行為とされた。この戦争違法化の制度を支えるために、各主権国家には侵略者に対抗して自国を守る自衛権の行使が、国力の大小にかかわらず、等しく認められることになった。国際連盟には、侵略者に対して加盟国全てで対抗する集団安全保障機構としての役割が期待された。

しかしこの新しい秩序は、ナチス・ドイツの侵略行為によって崩壊し、第二次世界大戦が始まる。ただし連合国の勝利によって、ナチスによる20世紀の国際秩序に対する挑戦は打ち砕かれた。20世紀の国際秩序は、補強されて、再確立されることになった。

民族自決の原則は、その規範的地位を高めて、アジアやアフリカでも適用されるようになった。小国であっても独立を侵されてはならないという主権平等の原則が、武力行使の一般的禁止とともに、強調されることになった。

日本の左派系言論人は、実はアメリカは、NATOを通じて、この国際秩序も蹂躙しようとしている、といったことを言う。NATOが各主権国家の存在を超えた軍事同盟であり、その盟主がアメリカだから、といった印象論で、そのように言う。

しかしNATOは、各加盟国が国連憲章51条で認められた集団的自衛権を根拠にして成立している。なぜ集団的自衛権が保障されているのかと言えば、小国の個別的自衛権だけでは大国からの侵略に対抗できず、また国連の全加盟国による集団安全保障は発動・行使に諸々の困難が予測されるからだ。

あらかじめ地域的な安全保障の仕組みをとっておいて侵略者の行動を抑止し、有事の際には小国が同盟国とともに有効に侵略者に対抗できるようにするための措置が、集団的自衛権である。いわば集団安全保障と個別的自衛権の間に第三層の安全保障の仕組みをとることよって、小国を含めた各主権国家の安全を確保していくのが、集団的自衛権である。

同盟と影響圏は全然違う
プーチン大統領の侵略戦争を見て、多くの人々が「19世紀の国際政治を見ているようだ」という感想を抱いた。大国が、自国の「影響圏」を広げるために軍事行動を起こして、他国の領土の一部を獲得したり、吸収してしまったりする行為は、20世紀以前には頻繁に見られた。実際に、ウクライナは、ソ連に吸収される前にも、国家として存続していた時期と、消滅させられていた時期とを繰り返している。

その他の東欧諸国も同様だ。今回の戦争で一貫してウクライナに対する強い支援の態度を示しているポーランドやスロバキアは、国家の大国の狭間にあって、消滅・誕生と国境線の変更を繰り返し経験してきている。そのたびに占領に伴う抑圧や虐殺の憂き目にも遭ってきている。

これらの諸国の人々にとってみれば、ロシアがか弱き敗者であるといった、日本の反米的な言論人に見られる描写は、全くのナンセンスである。ロシアこそ、数世紀にわたって、これらの諸国の自由と独立に対する脅威であった。
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2022/04/13(水) 06:46:59.43ID:CAP_USER
20世紀になってからも、ソ連は、当初はヒトラーと結んで、ポーランドを分割併合するなどの行動をとっていた。ソ連が第二次世界大戦時に戦勝国側に立つことになったのは、ヒトラーが独ソ不可侵条約を一方的に破棄してソ連を攻撃し始めたからである。しかもソ連の赤軍は、東欧における自由主義者たちの蜂起は決して支援せず、代わりに共産主義者の傀儡政権を樹立していった。ソ連の明白な「影響圏」に置かれて、共産主義の衛星国としてのみ存続することを許された東欧の人々にとっては、1989年東欧革命で勝ち取った自由と独立は、絶対に譲り渡したくない貴重な財産だ。

こうした歴史を見れば一目瞭然であるように、ロシアの「影響圏」は、中小国の独立を無視して広がるものである。それは現在の国際秩序の諸原則を無視して広がるものである。違法であり、国際秩序のためには認めることができないものである。

これに対して同盟とは、中小国を含めた諸国が、自国の安全保障をより確実にするために、自らの意思で形成するものだ。実際のNATO東方拡大の経緯を見ても、嫌がる東欧諸国をアメリカが無理やり加入させた、などという事例はない。国際法もこれを正式かつ不可欠な制度として認めている。国連憲章51条にしたがったNATOのような同盟機構は、加盟国の独立を保障し、国際秩序の維持に貢献するものなのである。陰謀論者についていくと、やがて日米安全保障条約の否定にまで連れていかれるだろう。

「影響圏」の拡大と、同盟の拡大を、同じ土俵で論じることは、対象国の人々の気持ちを完全に無視することである。そして国際秩序の諸原則を、真っ向から否定する態度である。

ウクライナとNATOの今後の関係
NATOの東方拡大は、自国の安全をよりよく保障したい、という東欧諸国の要望をふまえて、起こってきた。アメリカなどの冷戦期からのもともとのNATO構成諸国には、むしろ当初は躊躇があった。しかしワルシャワ条約機構が消滅し、巨大な東欧の平野部に位置する多数の小国群が、地域的な安全保障の傘を持たず「力の空白」の状態に置かれ続けることがもたらすリスクを看過できない、という判断に至り、ようやく1999年から開始されたのが東方拡大だ。

それでもロシアを刺激しすぎないようにするために、旧ワルシャワ条約機構を構成していた東欧諸国の加入を認めたところで拡大を停止させ、旧ソ連の崩壊に伴って独立した諸国の加入は認めてこなかった。バルト三国が例外だと言われることがあるが、正確には、旧ソ連崩壊の前に独立していた諸国である。

ウクライナは、ジョージアとともに、2008年にNATO加盟を審査されたが、フランスやドイツなどの反対によって、実現しなかった。欧州の有力国が、ロシアを刺激することを恐れたのである。この時、クロアチアとアルバニアは加盟を認められた。その後、モンテネグロと北マケドニアが加盟を果たしているが、旧ソ連圏のウクライナとジョージアは見送られ続けている。

NATOの東方拡大それ自体が、国際法の諸原則から見て問題がないとして、果たしてこの拡大の仕方がもっとも妥当だったかどうかについては、議論の余地がある。
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2022/04/13(水) 06:47:03.54ID:CAP_USER
反米的な陰謀論者は、NATOの東方拡大がロシアの軍事行動を誘発させた、と考える。プーチン大統領がNATO東方拡大を非常に嫌っていることは事実なので、この議論には慎重に検討すべき要素がある。ただだからといって拡大するたびに地域が不安定化した、とは言えない。

冷戦終焉後の8年間を主導したクリントン政権の二期目末期にNATO東方拡大が始まったため見逃されがちだが、その後は共和党のブッシュ政権とトランプ政権の時代にのみ、加盟国の拡大が実現している。民主党のオバマ政権の時代に拡大は発生しておらず、まだ一年余りだがバイデン政権も意欲的とは言えなかった。

共和党政権のほうがNATOの主要な欧州の同盟国に防衛費の増額を要求するなど厳しい態度をとっていたが、小国を加盟させる拡大には意欲的であった。民主党政権のほうがロシアに気遣う現状維持的傾向を持っており、それはつまりウクライナやジョージアのようなロシアの脅威にさらされている域外の中小国に冷淡だということである。そして、結果的には、ウクライナに対して、プーチン大統領は、民主党政権の時期に冒険的行動をとっている。

プーチン大統領は、NATO構成諸国には決して手を出せない。劇的な拡大を果たしてもなお、70年以上にわたって、NATOが域外からの攻撃を一切許していないのは、画期的な記録であり、史上最も成功した軍事同盟と言われるゆえんである。拡大した地理的範囲に応じて、ヨーロッパに安定が広がっていると評価することはできる。もしそうだとすれば、ゼレンスキー大統領のように、むしろウクライナまでNATOを拡大させてこそ、ヨーロッパは安定する、という議論にも一理ある。

NATO東方拡大がプーチン大統領を刺激したという長期的な見方と、米国民主党政権の不介入主義的な姿勢がプーチン大統領の冒険的な行動を誘発したという短期的な見方は、当然、双方が矛盾なく成り立ちうる。政策論としてのウクライナのNATO加入は、今回の戦争の後も、非常に繊細で複雑な問題として、議論され続けるだろう。

だがそのような政策論を、冷静に受け止めて理解していくためにも、むき出しの反米主義にかられた陰謀論に毒されることだけはないように、警戒しておきたい。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/94280
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