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155ミリ榴弾砲|米軍HP

 アメリカのバイデン大統領は、ウクライナへの追加の武器提供の一環として、大砲の一種である「榴弾砲(りゅうだんほう)」の提供を決定した。20キロ先の敵部隊を攻撃することができ、前線に展開する味方部隊を後方から強力に援護する。

◆東部防衛に適する
 ロシア軍はキーウ包囲から東部ドンバス地方の制圧に重点を移している。この局面においてウクライナ軍に榴弾砲を提供することは、非常に効果的に働く可能性が高い。軍事ニュースサイトの『1945』(4月14日)は、開けた地形が広がる同地方において、歩兵だけの戦闘には限界があると指摘する。ロシア軍の包囲を受けないようにするため、「ウクライナには、ロシアの強力な火力に歩兵をさらすことなく目標を攻撃できる、さらなる戦車と機動火砲が必要だ」と論じる。

 これまでウクライナは携行式ミサイルのジャベリンなど、NATO加盟国が提供した兵器を投入してきた。米VOX誌(4月17日)はウクライナがこうした火器を「見事に活用してきた」とみる。ただし、既存の兵器のみでは不足があるとして、ゼレンスキー大統領は戦闘機を含むさらなる兵器の提供をNATO加盟国などに要請していた。

◆提供準備進む
 米国防総省のカービー報道官は4月13日の記者会見で、新たに提供する一連の武器をウクライナに届けるべく、国防総省が手続きを進めていると語った。VOX誌によると、新たなパッケージには155ミリ榴弾砲18基に加え、自爆型ドローンの「スイッチブレード」数百機などが含まれる。ロシアは東部を猛攻しており、一刻も早い提供が求められる。カービー報道官は、以前の提供では大統領による署名から4〜5日で発送したと述べ、タイムリーな供給に自信を示した。

 榴弾砲の使用に向け、ウクライナ内外で体制整備が進む。ロイターは4月18日、アメリカ軍がウクライナに対し、近く榴弾砲の訓練を実施すると報じた。一部ウクライナ兵に対してウクライナ国外で使用法を指導し、ウクライナに戻ってから部隊内に知識を共有させる計画だ。

◆提供の是非をめぐる議論
 提供には賛否両論がある。『1945』は、榴弾砲は現在のウクライナに必要だと論じる。同国は射程の短い牽引式を多く保有するが、自走式長距離砲はロシアに比べ「相当に不足している」状態だ。航空戦力も限定的なウクライナは、敵陣深部への攻撃を砲撃に頼らざるを得ない。

 しかし、実際の効果は未確定だとの指摘もある。米シンクタンクの分析官はVOX誌に対し、提供される榴弾砲の数と種類、そしてどれほど訓練とメンテナンスを受けられるかにより、有用性は異なると説明している。主戦場が市街地から開けた野外へと移行するにつれ、榴弾砲の優位は際立つとみられるが、効用のほどは現段階で確定できない。

 さらに同誌は、バイデン政権が武器の追加供給を決定したのを受け、ロシア大使館が正式な外交文書を通じて反発したとも報じた。プーチン大統領を刺激すれば西側諸国に戦火を拡大させる恐れもあり、榴弾砲を含む重火器の提供には西側にも根強い慎重論がある。

https://newsphere.jp/world-report/20220420-2/