楽天モバイルが今月13日に「月額0円」の携帯電話の料金プランを見直すと発表したことを受け、携帯各社の契約状況に変化が起きている。KDDIでは、割安プラン「povo(ポヴォ)」への申し込みが2・5倍に増えた。楽天から契約者が流出している可能性があり、ライバルは顧客獲得の好機と捉えて営業活動を強化している。

手続きに遅れも
 「楽天の記者会見後から契約者が急に増えた」。携帯大手の幹部は、今月13日以降の契約状況を説明する。これまで楽天との間で契約者が「流出超」の状態だったプランが、「流入超」に転換したという。

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「月額0円」廃止を発表した楽天モバイルの三木谷会長(13日、東京都世田谷区で)

 楽天は今月13日午前、月間のデータ利用量1ギガ・バイト(GB)までを無料としてきた料金設定を廃止すると突然発表した。7月からは3GBまでを税込み1078円とする新たな料金プランを導入する。既存の契約者も新プランに強制的に切り替わる内容で、SNS上では「いきなりすぎる」「すぐに解約する」などと批判の声が相次いだ。

 14日以降、KDDIや格安スマートフォン事業を展開するインターネットイニシアティブ(IIJ)では、申し込み用のインターネットサイトに「申し込みの集中で手続きが遅れている」と掲示する事態となった。

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 各社は楽天契約者の取り込みに動いており、ツイッターでは、ソフトバンクが割安プラン「LINEMO(ラインモ)」について「ずーーーっと990円。ほんとに、ほんとだよ!」と投稿。KDDIもポヴォについて「落ち着いて聞いて下さい。ポヴォは基本料0円」と書き込んだ。

赤字改善が急務
 楽天が月額0円プランの廃止に踏み切ったのは、携帯事業の赤字体質の改善が急務となっているためだ。

 楽天モバイルを傘下に持つ楽天グループが13日発表した2022年1~3月期連結決算(国際会計基準)は、最終利益が914億円の赤字だった。携帯事業は営業利益段階で1350億円の赤字で、大きく足を引っ張っている。利益度外視のプランで契約者獲得を優先してきた影響が大きい。決算発表の記者会見で、三木谷浩史会長兼社長は「ぶっちゃけ、ゼロ円でずっと使われても困る」と本音を吐露した。

 楽天は新プランの導入に合わせ、既存契約者は1GBまで無料の現行プランを使い続けられるよう検討していた。ただ、電気通信事業法が禁じる「囲い込み」に抵触する可能性があり、断念したという。

 楽天の携帯事業は後発で、20年4月に本格参入した。基地局整備が進み、通信可能エリアが広がったことで、採算に目をつむった料金体系で利用者を引きつけるこれまでの戦略は役割を終えたと判断したようだ。「楽天では今後も利用者離れが続くだろうが、収益が健全化するのはプラスだ」(ITジャーナリストの石川温氏)との見方もある。

 三木谷氏は、新プランの競争力に自信をみせ、「契約者がそんなに減ることはない」と語る。携帯各社の利用者獲得競争は一段と熱を帯びそうだ。

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