【AFP=時事】ロシアが2月24日にウクライナに侵攻してから、3日で100日となった。開戦初期の段階で首都キーウの掌握や政権打倒を狙ったロシア軍は作戦の縮小を迫られ、東部ドンバス地方の制圧を目指している。

 ロシア軍は、東部ルガンスク州の主要都市セベロドネツクの一部を制圧。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「ドンバス地方の状況は依然として極めて厳しい」と認めている。

 英ロンドンのシンクタンク、王立国際問題研究所(チャタムハウス)のマシュー・ブレグ氏は、ロシア軍は困難に直面しながらも前進しているとしつつ、ロシアが望んだと思われるような「軍事的な征服にはなっていない」との見解を示した。

 ブレグ氏は、「ロシア軍は装備を更新せず、部隊も消耗している」と指摘し、「今後数週間でロシアは機動戦から、構築した陣地を足掛かりとした陣地戦へと軌道修正せざるを得ないだろう」と予想する。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が始めた戦争は、当初の目標からは後退したかもしれない。だが、南東部の主要港湾都市マリウポリを制圧し、2014年に併合したクリミア半島を結び陸路の戦略回廊を確保した。戦争ではなく「特別軍事作戦」と呼ぶロシアにとって、ドンバス地方での支配地域拡大は歓迎すべき状況になるだろう。

■戦線拡大

 ウクライナ侵攻は、第2次世界大戦以降で最大の侵略行為になったが、当初ロシア軍部隊は16万人で、ウクライナ軍をわずかに上回った程度だった。軍事専門家は、攻撃側は防御側の3倍の兵力を確保する必要があるという「攻者3倍の法則」に言及している。

 さらに、ロシアはウクライナで航空優勢(制空権)の確保に失敗した。また、ロシアの兵力は、キーウや東部、南部の3正面に裂かれた。

 一方のウクライナ軍側は兵力の分散を余儀なくされたものの、北大西洋条約機構による軍事訓練や親ウクライナの西側諸国から対戦車、対空兵器の供与を受け、ロシア軍側に大きな打撃を与えることが可能となった。

 プーチン大統領は開戦1か月で、ドンバス地方の掌握に注力することを決めた。戦力を集中させることでウクライナ側を圧倒し、露呈したロシア軍の重大な欠点に対応する思惑だ。

 米国防総省のジョン・カービー報道官は先週、ウクライナ東部について、「ロシアに近接しており、補給路や軍事力にも近い」と述べ、開戦当初の段階で戦線が伸び切ってしまい、補給が追いつかなくなったことを教訓として生かしているとの考えを示した。

 さらにカービー氏は、ロシア軍の戦術に関して、「小規模の部隊をより狭い範囲に投入して大きな移動を避けることで、航空支援を地上作戦に組み込むのが容易になっている」と指摘した。

■塹壕(ざんごう)戦

 ロシア軍の砲兵は、ドンバス地方でウクライナの陣地を攻撃しているが、前出のブレグ氏は、「ウクライナ側は塹壕を掘って地中に隠れている」とし、簡単には掃討できないだろうと分析する。