元徴用工や従軍慰安婦問題などで「史上最悪」の関係といわれてきた日本と韓国だが、2022年6月10日から再開する「インバウンド」(訪日外国人客受け入れ)では、韓国人観光客のラッシュになりそうだ。

2019年以来の「日本製品不買運動」(ノー・ジャパン)と、コロナ禍によって韓国国民の日本旅行はすっかり冷え込んでいた。しかし、もともと韓国の人たちは「日本旅行」が大好き。これが日韓関係の友好復活につながれば、と大いに沸く韓国紙を中心に読み解くと――。(編集部注:引用する韓国紙は日本語版)

「大阪・神戸2泊3日ツアー」2時間で完売
日本のインバウンド再開を待ち望んでいたのか、韓国紙の見出しが踊っている。朝鮮日報(6月9日付月)の見出しは「日本が団体観光客の入国を許可するや...韓国で旅行予約887%増」というものだ。

それによると、韓国大手旅行会社「ハナツアー」の5月30日から6月5日までの日本行きパッケージツアー予約数は直前の1週間に比べ284%増えた。その前週との比較では887%の急増だという。全海外旅行ツアー予約における日本行きツアーの割合も2.1%から24.3%へと増えた。

別の旅行会社「黄色い風船」でも、5月の日本旅行の予約が前月比で約7倍に増加した。全ツアーの予約件数が約2.5倍増えたのと比べると、日本旅行が突出しているらしい。旅行会社「実にいい旅行」が売り出した「大阪・神戸2泊3日パッケージツアー」は約5万2000円~5万5000円の特別価格だが、1365席が2時間で完売するありさまだった。

2019年7月に始まった日本政府による半導体部品などの輸出規制をきっかけに日本製品不買運動(ノー・ジャパン)が広がった。韓国人の日本旅行も年間700万人以上が訪れ、日本は韓国国民にとって「一番行きたい国」だったが、その後、コロナ禍もあり、日本への観光旅行は途絶えたままだった。今回の韓国国民の訪日ラッシュの背景には「円安であること」「コロナが落ち着いたこと」「反日感情が薄れたこと」などの要因が考えられているが、もともとは日本旅行が好きだったことが挙げられるようだ。

朝鮮日報によると、韓国の旅行会社関係者の話として、「ほかの所とは違い、日本は旅行さえ可能になればすぐにでも出国したいという人が多い」とある。

「ノー・ジャパン」運動でも、「日本旅行熱」は冷めず

韓国における「日本旅行熱」はずっと冷めないで続いていたようだ。2020年8月に中央日報は「日本、新型コロナ以降韓国人が行きたい国1位復帰」(8月21日付)という見出しで、依然として「日本人気が高い」と報じている。

日本交通公社と日本政策投資銀行が海外旅行の経験がある12か国の人々に、それぞれ「新型コロナ終息後に旅行したい国」を聞いたところ、韓国の人にとって日本はハワイと並んで1位に返り咲いたという。

一方で、J-CASTニュース会社ウォッチでも、これまで何度か「日本人気」と「ボイコット・ジャパン」との間で揺れる韓国の人々の姿を取りあげた。2019年9月26日付「【日韓経済戦争】韓国紙も驚く『長~い日本製品不買運動』意外な被害者とは...」では、韓国からの観光客が途絶えた対馬(長崎県)の被害をこう記した。

《韓国紙にとっても(ボイコット・ジャパン運動は)大きな疑問のようで、中央日報(2019年9月19日付)「コラム:長期化する日本製品不買運動の影」は、次のように分析している。たとえば、対馬のケースがそうだ。
「対馬訪問客の95%に達した韓国人の足が途切れ、対馬は閑散としている。しかし、その被害は対馬住民だけのものではない。最近、対馬に新たにできた宿泊施設・食堂・免税店・釣具店の大部分は韓国人が投資した施設だが、これらの被害がこの上なく大きい。実際、対馬に事業や就職のために進出した韓国人は200人余りに達する。彼らの仕事がなくなっている」》
2019年12月25日付会社ウォッチ「【日韓経済戦争】観光客が戻ってくる!? 韓国最大の日本旅行サイトが「不買運動終結」を宣言 その理由は?」では、韓国内最大の日本旅行コミュニティーのジレンマと決断を取りあげた。