6月29~30日にスペインのマドリードで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に、日本の首相として初めて岸田が出席すると表明した。ウクライナ戦争の参戦国として名乗りを上げると同時に、中国侵略戦争に向けて米欧との帝国主義的軍事同盟の強化を図ることが狙いだ。これに先立ち、岸田は6月10日にシンガポールで行われたアジア安全保障会議の講演で「防衛力を5年以内に抜本的に強化し、防衛費の相当な増額を確保する」と表明した。改憲・戦争と大軍拡に突き進む岸田打倒へ、全学連を先頭に実力闘争としてかちとられた5・22デモの地平を全国で拡大しよう。6・28新宿反戦デモに立ち上がろう。

軍事最優先の「骨太方針」
 ウクライナ戦争の最中に米日帝国主義の中国侵略戦争へのさらなる本格的な踏み込みを確認した5・23日米首脳会談をもって、帝国主義の体制的延命をかけた世界戦争・核戦争の過程が一気に加速されている。
 とりわけ危機に立つ日本帝国主義は、中国侵略戦争を自らの戦争として決断し、帝国主義としての延命のために物的・人的資源のすべてを戦争に動員しようとしている。そのことを示したのが、6月7日に閣議決定された「骨太方針22」だ。周知のとおり「骨太方針」とは、翌年度の予算編成などの方向性を示すものとして、内閣府の経済財政諮問会議が毎年6月に策定するものだが、今回出されたものは従来のそれとは全く異なる。
 まず「第1章/我が国を取り巻く環境変化と日本経済」で、「我々はこれまでの延長線上にない世界を生きている」とし、「ロシアのウクライナ侵略、権威主義的国家による民主主義・自由主義への挑戦」が「我が国を取り巻く環境に地殻変動とも言うべき構造変化」を生じさせたと確認。そして「第3章/内外の環境変化への対応」の冒頭に「外交・安全保障の強化」を挙げ、NATOの加盟国が防衛費について国内総生産(GDP)の2%以上を目標としていることを例示し、防衛力を「5年以内」に抜本的に強化することを明記した。原案では、NATO諸国がGDPの2%以上の国防予算確保を掲げていることは注釈での紹介にとどめ、「5年以内」との明記もなかったが、安倍晋三など自民党内から「しっかりした目安と期限を明示して国家意思を示せ」と指摘されたことを受け、本文に書き込まれた。
 さらに岸田は、「骨太方針」の閣議決定を受け、同じ日に経済財政諮問会議と「新しい資本主義実現会議」の合同会議を開催、そこで「我が国を守り抜く防衛力を構築すべく、さまざまな取り組みを積み上げていき、その上で必要となる予算をしっかりと確保していく」と述べた。自民党政調会長の高市早苗も、防衛費に関し「必要なものを積み上げれば、10兆円規模になる」との認識をあらためて表明した。しかもその財源は「短期的には国債の発行」「将来的には日本経済を拡大して防衛費に充てる」という。だが、「将来的な日本経済の拡大」などまったく空虚な絵空事でしかないことは、支配階級自身がよくわかっている。実際のところ、歴史的なインフレと円安に対してなすすべがなく、経済成長の展望もまったくない中で、日帝はもはや経済の軍事化と戦争に突き進む以外に延命できないところに追い込まれているのだ。