幼いころから使い慣れた「日本手話」による授業を受けられず、憲法で保障された「ひとしく教育を受ける権利」を侵害されたとして、北海道札幌聾(ろう)学校(札幌市)の小学部3年の男子児童が27日、道に慰謝料など550万円の支払いを求める訴訟を札幌地裁に起こした。

 訴状などによると、日本手話は文法体系が日本語とは異なり、主にろう者同士が使っている。これとは別に、日本語の文法に合わせて単語ごとに手の動きを当てはめた「日本語対応手話」があり、一般的な手話通訳に使われている。単語の手の動きは基本的に同じだが、ろう者の中には日本語対応手話を理解できない人もいるという。

 原告の男児は先天性の聴覚障害があり、日本手話を第一言語として育った。同校では日本手話を主なコミュニケーションの手段とする学級で学ぶ。2年時までは日本手話ができる担任がいたが、今年度の担任は日本手話がほとんどできず、日本語対応手話や身ぶりによって指導しているという。男児は教員の問いかけの意味が理解できず、授業を欠席している。

 原告側は5月、学校側に改善を求めたが、一部の授業で日本手話のできる補助教員を担任の通訳として配置しただけで、担任と直接会話できない状態が続いているという。

 同校によると、小学部の児童は計38人。うち日本手話で学ぶ児童は15人で、うち3年生は原告の男児1人。道は「訴状が届いていないので、コメントを差し控える」としている。

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