ロシアによるウクライナ侵攻から半年が経ちます。現在、戦況は膠着(こうちゃく)状態とみられていますが、専門家によりますと、南部のヘルソン奪還に向けて新たな局面に突入しているということです。

 ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく半年。現在、東北部や南部では青い箇所が広がり、ウクライナ軍が徐々に奪還してきているように見えますが、西側諸国の当局者によりますと、両国ともに流れを左右する十分な地上戦力を保持しておらず、行き詰まりに近い状態だといいます。

 膠着状態のなか、戦況は新たな局面に突入するのでしょうか。

 現在、ロシアが実効支配するウクライナ南部のクリミア半島で戦闘が激化しています。

 ロシアのタス通信によりますと、20日にクリミア半島のセバストポリでロシア黒海艦隊司令部がドローンを使った攻撃を受けたということです。

 ロシアは防空システムが起動したことを公表しています。

 ウクライナ、ゼレンスキー大統領:「クリミアで始まったこのロシアの戦争はクリミアの解放で終わらせなければならない」

 クリミア半島を巡ってはゼレンスキー大統領が9日に奪還を表明し、以降はロシア軍の空軍基地や弾薬庫などで爆発が相次いでいて、緊張が高まっています。

 なぜ今、ゼレンスキー大統領はクリミア半島奪還に向けた戦略を取っているのでしょうか。

 外交・安全保障が専門の明海大学の小谷教授によりますと…。

 明海大学・小谷哲男教授:「今、ウクライナ軍が力を入れているのが『南部ヘルソン州の解放』なんですけれども、このクリミア半島というのはヘルソン州にいるロシア軍に戦力を供給したり、あるいは補給物資を供給する後方拠点となっています。クリミア半島を攻撃するということがウクライナにとって全体的により有利な状況を作ることができるということになる」

 攻撃の背景には現在の季節も関係しているといいます。

 明海大学・小谷哲男教授:「ちょうど今、夏休みで観光シーズンですので、ロシア本国から多くの観光客がクリミア半島を訪問しているわけですが、攻撃が続いているということでクリミア半島から『ロシア人の観光客が逃げ出す』という事態が続いています。そういう意味でウクライナ側として『クリミア半島が自分たちのものだ』と、そういう主張を結果的に証明することになっていると思う」

 また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は18日、クリミア半島で起きた爆発は非正規部隊「パルチザン」が関係しているといいます。

 明海大学・小谷哲男教授:「そこに元々住んでいた住民たちが抵抗運動を続けていて、彼らのことを『パルチザン』と呼ぶわけです。『パルチザン』と『ウクライナの正規軍』が連携を深めていくことで、少なくともこのヘルソン州においてウクライナが有利な立場に立てる、そういう可能性は十分、出てくると思います」

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