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核融合反応によって発生する熱エネルギーを次世代の発電システムとして利用するために、核融合炉に関する研究が世界中で活発に行われています。新たに、韓国の核融合炉「KSTAR」が1億度を超えるプラズマを従来よりも安定した状態で30秒維持することに成功しました。

KSTARは韓国が運営するトカマク型の核融合実験装置で、強力な磁場を発生させて装置内部に超高温のプラズマを閉じ込められます。KSTARは2018年に1億度のプラズマを発生させることに成功し、2020年には1億度のプラズマを20秒間維持して当時の高温維持時間記録を塗り替えました。

人工太陽の世界記録が更新、1億度のプラズマを20秒維持することに成功 - GIGAZINE


そして、2022年9月には1億度のプラズマを30秒間維持したことを報告しました。2021年6月には中国の原子炉「EAST」で1億2000万度のプラズマを101秒間維持する記録が樹立されており、KSTARの「30秒間」という高温維持時間は長さの面では世界記録を塗り替えるものではありません。しかし、今回のKSTARの記録にはプラズマを安定制御するための新開発の技術が用いられており、将来的に実験炉の設備アップグレードなどによって記録が伸びることが期待されています。

高温プラズマを長時間維持するには、「プラズマの移動」をなるべく抑える必要があり、プラズマの移動制御には「周辺輸送障壁(ETB)」と「内部輸送障壁(ITB)」という2種類の輸送障壁への理解を深めることが重要とされています。韓国の研究チームはITBに関する研究成果をKSTARに適用することで、プラズマ密度を低く保ったまま1億度のプラズマを発生させることに成功しました。


今回の実験では、KSTARのハードウェア面での制限によって反応が30秒で停止されました。研究チームは、KSTARのアップグレードが完了すれば今回の実験の再現性が高まると述べています。一方で、インペリアル・カレッジ・ロンドンで核融合について研究するドミニク・パワー氏は「今回の実験結果は非常にエキサイティングです。しかし、今回用いられた理論がスケールの異なる実験装置でも機能するかは不確実で、KSTARよりもはるかに大規模な国際熱核融合実験炉(ITER)などの核融合実験装置でも機能するかは分かりません」と指摘しています。

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