「教会側からネタを投下してくれる」
「正直言って、番組制作者とすれば来る日も来る日も統一教会ネタをやるのは苦痛だし、飽きてもいます。それでも統一教会側がツッコミどころ満載のネタを投下してくるんです。

その上、山際大臣を筆頭に政権側の関係人物も、さらには次々に声をあげ始めた2世や被害者も、キャラが立っています。いまややめたくてもやめられない状況にいるというのが正直なところという気がします」

こう語るのは、とあるワイドショーで統一教会問題を担当するディレクターだ。彼が語るように、日本のテレビのワイドショーは現在、来る日も来る日も統一教会問題を放送し続けている。7月8日に安倍元首相が銃撃されてから、すでに100日以上が過ぎたが、なぜワイドショーは統一問題を放送し続けることができるのか。

通常これほどまでにひとつの問題を放送し続ければ、ネタが切れてくる。しかも、視聴者に飽きられてしまうリスクも高い。しかし、今回各局とも統一教会問題を取り上げるのをやめる気配はまったくない。これはなぜなのか? かつてワイドショーの制作にあたっていた筆者は、複数のワイドショー関係者に聞き取りを行い、自らの経験ももとにその背景を分析してみた。

そもそもなぜここまでワイドショーが継続的に統一教会問題を取り上げ始めたのか? そのきっかけとなったのは、安倍首相銃撃事件直後、参議院議員選挙期間中にテレビや新聞が「統一教会の名前」を報道できなかったことに対する反省にある、とあるディレクターは語る。

「当初から“統一教会だ”とわかっていたのに、それを放送することができませんでした。危機管理面も考えて慎重姿勢になる上層部に対して、現場のスタッフたちは非難囂々でした。だから、教団側が会見したときにはガッツポーズしました。もしあの会見が無かったら、いまでも統一教会という名前を出せていなかったかもしれません」

「ミヤネ屋」が果たした役割
当初、統一教会の名前を出せなかった忸怩たる思いが、現場の「統一教会問題を報道し続けよう」というモチベーションをキープさせている大きな要因だ、とするこの証言は非常によくわかる。筆者も周囲にいるテレビマンたちから当時、「名前を放送できなくて悔しい」という、同じような声をよく耳にしたからである。

そしてもうひとつ。大きな役割を果たしたのが、読売テレビ制作の『ミヤネ屋』であることは間違いないだろう。『ミヤネ屋』は、質・量ともに統一教会報道の先頭を走ってきたと言っていい。この番組が統一教会問題報道に積極的な姿勢となった理由はなんだろうか?

「それはミヤネ屋に、日本テレビ『ザ・ワイド』にいたスタッフが多く、彼らが統一教会問題に詳しかったからだ」と分析する記事を見かけるが、関係者に話を聞いてみるとどうやらそれは正しくないようだ。100人を超える数のスタッフがいるミヤネ屋に、『ザ・ワイド』出身のスタッフはわずか3人程度。スタッフルームでは「何を根拠にそんな記事が出るのか」と笑っているという。

では本当のところは何か? 関係者の話を総合すると、大きな要因のひとつは「テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』への対抗意識」であると言えそうだ。

ご存知の通り、『羽鳥慎一モーニングショー』は、現在放送されているワイドショーの中でもトップクラスの視聴率を誇る、いわばワイドショー界の雄だ。しかし『モーニングショー』は当初、スタジオにゲストとして呼んだ紀藤正樹弁護士の発言に対して局に抗議電話が殺到したことなどを受けて統一教会問題を取り扱うことに消極的な姿勢を見せていた。

そしてその間、出だしでつまづいた『モーニングショー』とは対照的に統一教会問題を積極的に放送していた『ミヤネ屋』そして読売テレビに対する世間の評価がどんどん上がったのだ。このことを受けて、どうやら『ミヤネ屋』は統一教会問題を積極的に扱うようになったのだ。