0001きつねうどん ★
2022/11/16(水) 12:20:46.74ID:ljBUf7Soマスターの重富寛さんと至極のビール＝広島市
飛行機での出張は本当に久しぶり。仕事なのに胸が高まります。今回は数年ぶりの広島。こちらにくると必ず訪れる店があります。それが「ビールスタンド重富」。ビール好きの私にとって広島とは、牡蠣でもお好み焼きでもなくこの店。
なにが素晴らしいって、とにかく「ビールがうまい」。出されるのは地ビールや海外の特産ビールではなく、きわめてふつうのアサヒ生ビール。それがうまいのだから驚きなのですよ。そのうまさを読者にどうやって伝えればいいのか…。「みずみずしい」と表現すれば伝わるでしょうか。新鮮というか、雑味がないというか、「いつも飲み慣れたビール、本当はこんな味だったんだ」と感動する味なのです。
マスターの重富寛さんは「いつものビールをおいしく出す」技を研究の上、実現されました。その美味しいビール、さらに重富さんは注ぎ方で味を変えてしまうのです。この店には「一度つぎ・二度つぎ・三度つぎ・シャープ注ぎ・マイルド注ぎ」のメニューがあります。元々のビールはすべて同じ。それを注ぎ方で味を変えてしまう、まさにビールマジックといったところ。
もし読者にビール好きの人がいたら、この店の名前を絶対メモしておいてくださいね。ビールの概念が変わると思います。私にダマされたと思って一度行ってみてください。
と、以上で終われば単なるグルメコラム。マネー秘宝館の館長としては、この先についてもしっかり説明せねばなりません。
ビールスタンド重富、営業時間が１７時から１９時までの「２時間」のみ。しかも注文は「２杯」まで。そして提供するのはビールだけでつまみや料理は「一切なし」。
「２時間のみ・２杯まで・つまみなし」。なぜ重富さんはこんな経営スタイルを取っているのでしょう？ だって、せっかくのおいしいビール、もっと長時間売りまくって儲ければいいじゃないですか。料理も出せばさらに売り上げが上がるのに、ねえ。
もしかして人件費の削減？ それともビールに絞って回転率を高める作戦？ いえいえ違います。重富さんは「街の０次会」を目指したのです。自分の店の儲けを考えるだけでなく、周りの店のことも考えてこのスタイルに行き着いたそうです。
いまやどこの街の飲食街も経営が厳しいです。小さくなるパイの取り合いで競争するより、街全体が幸せになる方法を考えよう――だから早めの２時間営業・つまみなしなんですね。うちでおいしいビールを飲んで気分良くなったら、次はご近所の店に行ってください、というわけです。私もご本人からその理由を知って衝撃を受けました。利益率や回転率でしか商売を考えられなかった自分は小さいなあと。
皆さんもおいしいビールに加え、柔軟な経営を学ぶためにもこの店を訪れてください。その際は「夕刊フジを読んで来ました」と言ってみてください。おいしいビールに加え、もれなくマスター重富さんの「特別な笑顔」がついてくると思います。
■田中靖浩（たなか・やすひろ） 公認会計士、作家。三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社勤務を経て独立開業。会計・経営・歴史分野の執筆・講師、経営コンサルティングなど堅めの仕事から、落語家・講談師との共演、絵本・児童書を手掛けるなど幅広くポップに活躍中。「会計の世界史」（日本経済新聞出版社）などヒット作多数。
https://www.zakzak.co.jp/article/20221116-XANYGM67KRNHFJWNORH5AMRT2A/
