団塊ジュニア世代は1971~74年生まれを指し、就職氷河期の先頭を走り、「失われた世代」(ロスジェネ世代)の代表として不遇をかこってきた。そんな彼らが70歳前後になる2042年、日本の高齢者人口は3935万人でピークを迎える。日本社会は危機的状況が予想されており、SNS上では「こんな世の中に誰がした」といった団塊ジュニアの声があふれている。

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■賃金上昇のなかった世代

「こんなんワシらが望んでいた未来とちゃうで」 ツイッターで「団塊ジュニア」と検索すれば、あまりの嘆きの声の多さに圧倒される。

「20年後、わずかな年金を頼りに生きていかなければならない」

「団塊ジュニアが老人になると、生きててすみませんになる」

「俺たちって社会の人柱のまま人生終わるのか」

 最初から最後までついぞ日の目を見ることはなかった、という諦めにも似た心境のようだ。著名人でいえば、タレントのカンニング竹山やマツコ・デラックス、スポーツのイチローや高橋尚子、政治家なら小渕優子らがそうだ。

 社会保障制度改革国民会議の会長を務めた清家篤氏によると、「団塊ジュニアは、経済的に恵まれていない時代を過ごしてきた世代」だ。1996~2001年の金融危機では、まだ多くの年齢層で所定内給与はプラスになっていたが、2カ所だけ例外があり、それは「25~29歳」と「30~34歳」の層だった。2006~11年はリーマン・ショックなどの影響で軒並み給与はマイナスとなったが、ここでも大きく落ち込んだのが、「35~39歳」「40~44歳」。2011年から16年にかけては他の年齢層がプラスに転じたにもかかわらず、相変わらずこの層だけはマイナスだった。まるで団塊ジュニアだけが社会の蚊帳の外に置かれていたような状況だ。

 その原因のひとつが就職氷河期による非正規労働の多さ。「賃金構造基本統計調査」(2021年)を見てみると、「45~49歳」の正社員・正職員の平均賃金は361万円。これに対し非正規は209万円で、正社員の6割にすら届かない。

「非正規労働の深刻なところは、年齢による賃金の上昇カーブが存在せず、20代でも50代でもほぼ同じ賃金だということ。つまり、月17万円程度の生活が延々とこれからも続く。そして、賃金が低いことは、将来受け取る老齢年金の受取額にも直結してくる。まさしく貧困の無限ループです」(特定社会保険労務士の稲毛由佳氏)

41万人が生活保護に頼るしかない
 こうした低賃金に我慢させられてきた団塊ジュニアは、そのまま貧しい高齢者に突入していく。

 日本総研調査部の下田裕介主任研究員は「高齢貧困」に陥る団塊ジュニアを約41万人と試算。2022年8月時点の高齢単身世帯の被生活保護者84万1023人の約半数に相当するボリュームだ。下田氏はまた、「就職氷河期世代全体(1970~82年採用)における将来的に高齢貧困に陥りかねない人を同様に試算すると、およそ“135万人”にのぼる」としている。

 そして、貧困に陥った団塊ジュニアの41万人が生活保護を受給した場合、生活扶助基準額の7.5万円(地域で差)で計算しても、国の年間負担は約3700億円。その被保護者が平均寿命まで生きると、トータルで8.4兆円に達する。

 また、これに含まれない中高年の「ひきこもり」が61.3万人いる(内閣府2018年調査)。親が亡くなったら、その相当数が被生活保護に組み込まれるに違いない。