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「墓場の画廊」のイベント「DVZ50」の展示と外観((c)永井豪/ダイナミック企画)

「マジンガーZ」「デビルマン」といえば、ともにアニメ史に燦然と輝く金字塔。その2作品が同年に世に出たのだから、当時の子供たちは幸せな時代に生まれたものだ。50年を経てもなお新たなファン層を拡大するその魅力を徹底検証した。

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 1972年12月3日。

 のちのロボットアニメ界に大きな影響を与える永井豪原作のテレビアニメ「マジンガーZ」第1話が放送されてからちょうど50年を迎える。

 科学者・兜十蔵博士が抽出に成功した新エネルギー「光子力」で動く巨大ロボット・マジンガーZ。地下帝国を支配するドクターヘルが送り込む機械獣軍団に、博士の孫、兜甲児がマジンガーZに乗り込み立ち向かう。

 ロケットパンチやブレストファイヤーなどの多彩な武器、マジンガーZの操縦席でもある小型航空機「ホバーパイルダー」が頭部にドッキング(「パイルダーオン」)することで動くという斬新な仕組み……さまざまな要素で少年たちを魅了した。

 マジンガーZの放送からさかのぼること約5カ月。72年の7月8日から放送されたのが、同じく永井豪の原作作品「デビルマン」だ。

 人類絶滅をたくらむデーモン族の勇者・デビルマンはヒマラヤ探検中に殺された不動明の肉体を乗っ取るが、日本で出会った牧村美樹に心を奪われ、悪魔の使命を捨てた「裏切り者」として襲いかかるデーモン族に立ち向かう。

 掛け声とともに放たれるデビルビーム、デビルウイング、デビルイヤーといった数々の特殊能力、斬新な変身スタイル……原作のコミック作品よりもヒーロー性が強調され、変身シーンや戦闘シーンは躍動感に満ちていた。「裏切り者」としての葛藤も描き、ダークヒーローものの先駆けとなった。

 どちらもアニメ史の中で今も燦然と輝く「伝説の作品」。それが同じ年に放送されたのだから、当時の少年たちが受けた衝撃はいかばかりだったか。

 ロックバンド「筋肉少女帯」「特撮」のヴォーカリストで作家の大槻ケンヂさんも、そうした少年の一人だった。2作品を熱心に見ていた当時をこう振り返る。

「『デビルマン』のアニメは当時の東京では土曜の8時台の放送で、『8時だョ!全員集合』の裏番組だったので、どっちを見ようか迷っていました。原色の使い方も印象的で、人間からデビルマンへのメタモルフォーゼ(変身)もショッキングでした。『マジンガーZ』も、リモコンで操縦していた鉄人28号のようなそれまでのロボットとは違い、自分が乗り込んで操縦するという新しい発想。それまであったものから全く新しいものが誕生するという意味では、音楽でいえばビートルズやテクノポップの誕生に立ち会ったようなものだと思います。ほんとに倒れるぐらいのショックでした(笑)。どちらのアニメも、永井豪先生の作品だけが持つなんともいえない雰囲気が漂っていた気がします。毎回、衝撃を受けながら見ていました」

 大槻さんは“筋金入り”の永井豪ファン。2作品はもちろん、小学校低学年で読んだマンガ「あばしり一家」など、永井豪作品に大きな影響を受けてきたと語る。

「よく、『大切なことは◯◯から教わった』と言いますが、僕の場合何かといえば、やっぱり原作版の『デビルマン』なんです。特に、終盤にかけて『神は良きものでない』という展開は本当に衝撃でした。のちに、いろいろなマンガやアニメに出会うと、これはデビルマン的な作品なのか、そうではないのか、そういう見方をするようになってしまいました。『エヴァンゲリオン』シリーズもそうですが、近年の『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』、『チェンソーマン』など話題の作品を見て、『おお、デビルマンだ!』と要素を見つけては納得するという(笑)。周りにも、『この作品がいかにデビルマン的か』を熱弁するようになってしまっています」

■両作に共通する力へのあこがれ

 あらためて作品が生まれた72年当時の時代背景を振り返ると、戦後の復興から右肩上がりの成長を続けた日本社会が、曲がり角を迎えた時期だったことに気づく。アニメ・特撮研究家の氷川竜介さんがこう語る。