https://images.newswitch.jp/images/d1dfd8dc-b949-4dfc-861d-c35a00f99003.jpg
工作機械は製造業を支える(イメージ)

4要件満たした11分野支援
政府は経済安全保障推進法に基づき、月内に航空機部品など11分野を「特定重要物資」に指定する。米中対立やウクライナ危機を背景にサプライチェーン(供給網)リスクが浮き彫りになる中、供給安定化を図る企業を支援する。企業からは「工場増設を検討する場合、日本が選択肢に入ってくる」(安川電機の小笠原浩会長兼社長)との声が挙がり、国内サプライチェーンに変化をもたらす可能性もある。11分野の中から工作機械・産業用ロボット、航空機部品、船舶部品の機械系3分野の動向を探る。(特別取材班)

政府は11分野の特定重要物資に指定するとともに、安定供給に向けた方針を策定し、特定重要物資の生産体制を強化する企業への支援策を講じる。高市早苗経済安全保障担当相は「サプライチェーン(供給網)の状況を十分にチェックし、(11分野が)重要な物資として挙がった」と説明する。

https://images.newswitch.jp/images/e14e3805-7368-45f7-8f9a-3ceb7f4fa814.jpg

政府は四つの要件に基づいて特定重要物資に指定する。①国民の生存に必要不可欠②外部への依存性③外部からの行為による供給途絶の蓋然(がいぜん)性④安定供給を確保する必要性―の四つすべてを満たす分野が対象となる。 特定重要物資の指定とともに、安定供給に必要な取り組みをまとめた方針案も公表した。各分野で生産能力の増強や研究開発、備蓄に関する目標の達成時期を設定。設備投資や供給源の多様化などの計画を進める企業に助成や、企業に融資する金融機関への利子補給といった支援策を用意する。

企業は供給確保に向けた計画を作成して申請し、所轄大臣が認定すれば支援を受けられる。政府は関連費用として補正予算で1兆358億円を計上しており、23年3月から申請受付を始める見込みだ。

米国と中国の対立やロシアのウクライナ侵攻により、多くの企業がサプライチェーンが寸断するリスクに直面している。政府は特定重要物資について安定的な確保やシェアの維持を目指す。

https://images.newswitch.jp/images/f1ef15ba-cbb4-48a8-aa77-27b0c834351a.jpg

【工作機械・産ロボ分野】工場増設、日本が選択肢に
今回の政策に対して工作機械、産業ロボットの両業界からは好意的に受け止める声が多く聞かれる。微細加工機が主力の碌々産業(東京都港区)の海藤満社長は「工作機械メーカーにとって非常に良い影響が期待できる」と捉える。ファナックの山口賢治社長は「産業用ロボットは製造業を支える基幹産業であり、日本が強い数少ない領域。この重要性を国が認識して支援してくれることは大変ありがたい」と話す。

安川電機は需要地生産による地産地消を基本方針とする。国内のほか、中国やスロベニアなどに産業用ロボットの生産拠点を持つが、小笠原会長兼社長は「(特定重要物資に指定されることで)ロボットの工場増設を検討する場合、日本が選択肢に入ってくる」と評価する。