ハッシュタグ「#教師のバトン」をつけて教員による性暴力の実例を紹介
「児童生徒がセクハラや不快感を感じた時点で、性暴力です。教員として自覚をもって職務に当たりましょう」。現役教員が投稿した教員による性暴力の実態が、SNS上で反響を呼んでいる。「これじゃまともに指導できない」という声もあるなか、なぜこのような投稿に至ったのか。教員歴7年目の高校英語教師(@high_school_JTE)さんに、投稿の真意を聞いた。

 先月末、高校英語教師さんがハッシュタグ「#教師のバトン」をつけて行った投稿では、「教員による性暴力」の実例として「生徒を褒めようと頭に触れる」「スカートの丈を短いと指摘する」「寝ている生徒の肩に触れて起こす」「手元を見ようと生徒に近づき威圧感を感じさせる」といった具体例が挙げられており、「児童生徒がセクハラや不快感を感じた時点で、性暴力です。教員として自覚をもって職務に当たりましょう」と注意喚起の言葉が添えられている。

 この投稿には、「どれもこれで訴えられたらやるせないな、という感じ。世知辛いですね……」「下着が見えそうなくらい短い女子にはなんて言えば…下着丸見えを放置するのが正しい指導なのか…」「もはや何もできませんな。放置あるのみ!」「性暴力とは極端な」など、共感を含め賛否両論の声が上がっている。

 これらの反応に対して、高校英語教師さんは「世間一般からしたら頭を撫でるのも肩を触るのもおかしいという感覚です」、「階段や廊下では、女子生徒の後ろを歩くのはダメです。スカートを覗き込もうとしていると思われたら、大変なことになります。廊下でも、後ろから早足で着いていっているようだと不快感を感じさせます。立ち止まって充分距離を取るか、別のルートで目的の部屋まで行きましょう」「机をトントンと指でたたくか、周囲の生徒に起こすようにお願いするか、起きてくださいと伝えるか、ですね。身体に触れる合理的な理由が全くないとのことです。そのため、身体に意図的に触れようとしたことになり、性暴力やセクハラになります」とひとつずつ丁寧に返信を行っている。

「生徒一人ひとりで感じ方が違うし、教員の中でも温度差があって、コンセンサスが取れていないのが怖いなと思いました。生徒との距離感が近く人気のあった先生が、数年後に不祥事が発覚するというのもまれにあること。管理職からも『触れていなくても性暴力は成り立つ』と言われてますし、自分の身を守るためにもできるだけ生徒と距離を置くことは必要なのかなと思います。ちなみに、指導において男子女子の差はありません」と高校英語教師さん。

 一連の投稿については「正直、生徒のために円滑な指導ができないというジレンマもあって、半分は皮肉の部分もあります」。指導すべき場面、校則で定められている以上指導せざるを得ない場面、そこまで指導する必要のない場面など、さまざまなシーンがあり、教員によっても考え方はまちまちだ。

「ただ、生徒を褒めるのに頭を触る必要はないし、スカート丈や制服の着こなしはそもそもそこまで細かく指導する必要があるとも思えない。生徒と教師は対等であるべきですが、実際には上下関係もある。一般企業で上司が部下にやらないようなことまでは、やるべきではないと思います」

 時代の流れとともに生徒と教員の関係も変わるなか、適切な距離感とはどういったものなのか。教育現場も難しい局面を迎えている。ENCOUNT編集部

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