https://img-newsweekjapan.jp/stories/assets_c/2022/12/221223zelensky-thumb-554xauto-579953.jpeg
「普段着」でも米議会のトップレディーたちにはモテモテのゼレンスキー(12月21日) Jonathan Ernst-REUTERS

<米議会に演説するのにスーツを着ないのは侮辱だ、と怒る保守派を黙らせるには、かつてゼレンスキーと同じく戦争指導者として米議会で演説したときのチャーチルの写真がいちばん?>

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12月21日、ロシアによる軍事侵攻が始まった2月以降、初めての外国訪問としてアメリカを訪問。過去10カ月ですっかりお馴染みとなったオリーブグリーンのトレーナーと同色のパンツ姿でホワイトハウスを訪れ、ジョー・バイデン大統領と会談を行った。

アメリカの保守派の有識者らは、ゼレンスキーのこの服装を厳しく批判。米連邦議会で演説を行い、首都ワシントンでバイデンと会うのだから、スーツとネクタイというもっとフォーマルな服装をすべきだったのではないかと問いかけた。

右派の有識者や保守派の評論家の多くは、ゼレンスキーが略式の軍服姿でワシントンを訪問したことについて、敬意を欠く行為だったと見なした。保守派メディア「ニュースマックス」の番組司会者であるベニー・ジョンソンは21日に投稿したツイートの中で、ゼレンスキーの服装の選択は「とてつもない侮辱」だと批判した。

右翼系メディアもと「ブライトバート」の記者であるウェンデル・ヒューズボや経済評論家のピーター・シフをはじめとするその他の者も、ゼレンスキーは空路はるばる大西洋を越えてきたが、「きちんとした服装」で登場することはできなかったと不満を表明した。

このように、ゼレンスキーが大きな注目を集める会談に、ポッドキャストの番組を持つライターのV.F.カストロが「戦時の普段着」と称した服装で臨んだことに対して、多くの保守派は強い憤りを表明。だが一方で、ゼレンスキーの服装を、ウィンストン・チャーチル英元首相が第二次世界大戦中にホワイトハウスを訪れた際の「サイレンスーツ」になぞらえる声もあった。

あるツイッターユーザーは、「ゼレンスキーが今日、オリーブ色の略式軍服を着ていたことに腹を立てた人は、かつてウィンストン・チャーチルが防空壕用の服装でホワイトハウスを訪れたことを思い返すといい」と投稿し、1941年にチャーチルがホワイトハウスを訪れた際の歴史的な写真を共有した。

https://twitter.com/JacobRubashkin/status/1605706046424522752?s=20&t=EIcmt0npZrQnfxdCuT1vPQ

ジャーナリストのジェイコブ・ルバシキンも同じ写真を投稿し、「これが第二次世界大戦中にチャーチルがホワイトハウスを訪れた時の服装だ」と書き込んだ。

ヨーロッパで激しい戦争が繰り広げられていた1941年12月、当時イギリスの首相だったチャーチルは、実用的なミリタリー調の「つなぎ」姿でホワイトハウスを訪れた。彼が戦時中、よく身につけていた「サイレンスーツ」あるいは「ロンパースーツ(チャーチルはこちらの呼び方を好んだ)」と呼ばれるものだ。

サイレンスーツの「サイレン」は「空襲のサイレン」を意味している。1940年から1941年にかけて、ロンドンをはじめとするイギリス各地はドイツ軍の激しい空襲に遭い、サイレンが鳴ったらすぐに服の上に着ることができるように作られたもの。以来このスーツは単に実用的なだけでなく、象徴的な意味合いも持つようになった。

ゼレンスキーが開戦当初から公の場に姿を見せる際に身に着けている「制服」である、オリーブグリーンのTシャツやトレーナーにも同じことが当てはまる。

2月24日にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始すると、ゼレンスキーはすぐに政治家の制服であるスーツとネクタイを脱ぎ捨てて、ロシア軍と戦っているウクライナ国民により近い服装に着替えることで、ウクライナ国民との団結を示して来た。大きな注目を集めるインタビューや(ヨーロッパ議会、イギリス議会での演説を含む)大統領としての演説でも、激しい攻防が続く東部ドネツク州のバフムトを最近訪れた際にも、同じ服装を貫いてきた。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/12/post-100445.php
https://twitter.com/5chan_nel (5ch newer account)