1848年1月24日にカリフォルニアで、ジェームズ・ウィルソン・マーシャルという人物が偶然金を見つけたことが「ゴールドラッシュ」の始まりとされています。世界各地にゴールドラッシュは発生してきましたが、一般的にゴールドラッシュはこのカリフォルニアのゴールドラッシュを指すことが多くなっています。

カリフォルニアのゴールドラッシュ
1848年1月24日、現在のサクラメントに近いアメリカン川でマーシャルが砂金を発見したというニュースが世界中に広まりました。当時のカリフォルニアの一部はメキシコ領で、未開の地でした。

そこに金が発見されたニュースによって、アメリカだけでなく世界各地から一獲千金をもくろむ人々が移り住んだのです。この人々は移住が起きた年である1849年にちなみ「フォーティナイナーズ」と呼ばれました。しかし、カリフォルニアに集まった人のほとんどは、金を見つけられたわけではありません。それでもゴールドラッシュが世界経済にもたらした影響は大きく、また舞台となったアメリカには副次的な影響もありました。

サンフランシスコ
サンフランシスコの1848年の人口はわずか1000人ほどでしたが、1849年には約2万5000人と急増しています。カリフォルニアへの玄関口、物資の補給地、歓楽街として発展し、大都会へと変貌を遂げたのです。また、ゴールドラッシュで成功した人が事業を始めるケースも多く、1864年にはカリフォルニア銀行が設立されます。

リーバイス
フォーティナイナーズの多くは金鉱を探し当てられなかったのですが、むしろ周辺事業に成功者が多かったといわれています。そのうちの1人がリーバイスの創業者、リーバイ・ストラウスです。

金鉱で作業する人の作業着はすぐにボロボロになります。ストラウスはその様子を見て丈夫で長持ちするワークパンツに需要があると考え、後の「リーバイス501」を考案し売り出したのです。リーバイス501は大ヒットしますが、その影響は作業着としてだけにとどまりませんでした。細身のラインやインディゴブルーなど本来は機能を付加するための外観がファッションとして受け、世界中に広まっていきました。

ジョン万次郎
井伏鱒二(いぶせ・ますじ)著『ジョン万次郎漂流記』で描かれた中浜万次郎は、実は1849年にサンフランシスコに上陸したフォーティナイナーズの1人です。ゴールドラッシュの起きた1848年は日本の嘉永元年で、ペリー来航前の幕末にあたります。ジョン万次郎は金の採掘で得た資金を、日本への帰国のために使いました。その後、幕臣となった万次郎は、海外使節団の一員として勝海舟、福沢諭吉らと共に再びサンフランシスコに渡ったのです。

ゴールドラッシュがもたらした金本位制への影響
1848年のカリフォルニアでのゴールドラッシュ以外の世界各地のゴールドラッシュは、1800年代後半に集中的に発生しています。金の供給が増えたことは、金本位制を導入する国の増加につながりました。金本位制により通貨の信用が高まり、結果として経済活動が活発になっていったのです。

金本位制とは、金を通貨の価値基準とする制度です。各国の中央銀行が発行した紙幣に見合う金を保有し、紙幣と金の交換を保証します。金と交換できる紙幣を「兌換(だかん)紙幣」といいます。ただの紙切れである紙幣の価値を、金によって裏付ける仕組みです。

金本位制の下では金という共通の通貨の価値基準があるため、為替相場が安定します。為替相場が安定すると、貿易が発展しやすくなります。