2023年度予算案の実質審議が始まった30日の衆院予算委員会で、立憲民主党は国会論戦を素通りして昨年末に決まった防衛力強化と原発活用への政策大転換を巡り、政府を追及した。岸田文雄首相はロシアのウクライナ侵攻などを踏まえた安全保障環境の悪化やエネルギー安定供給の必要性を強調し、決定プロセスに問題はないという認識を繰り返し示した。(川田篤志、佐藤裕介)

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 「順番が逆じゃないか」

 立民の岡田克也幹事長が問題視したのは、通常国会の開会に先立つ今月11日、日米の外務・防衛担当閣僚による安保協議委員会(2プラス2)が「日本の反撃能力の効果的な運用に向けて、日米間の協力を深化させることを決定した」と共同発表したことだった。

 政府は昨年12月、敵基地攻撃能力(反撃能力)保有や防衛費の「倍増」を明記した安保関連3文書の改定を閣議決定したものの、まだ国会で予算や法律の裏付けが得られていない段階。岡田氏は「私たちは予算審議もしていない、説明もしっかり聞いていない。米国と決定したというのはおかしい」と語気を強めた。

 これに対し、首相は「日本の現状を説明し、それを前提に今後どういった協力が考えられるかを確認した」と指摘。日本を取り巻く安保環境の厳しさに触れ、「迅速に対応しなければいけないという問題意識の中で、取り組みを一歩一歩進めていく姿勢は重要だ」と主張した。

 防衛力強化に関しては、具体的な説明を避けることが多かった。敵基地攻撃時の使用が見込まれる米国製長射程ミサイル「トマホーク」について、浜田靖一防衛相は今後5年間の購入数や支出予定額を示さず、「抑止のための必要数を整備する」と曖昧な答弁に終始。首相は「できるだけ手の内を明らかにしない防衛・安保上の配慮をした上で最大限の説明努力をする」と強弁した。

 政府が原発の60年超運転や次世代型への建て替え(リプレース)容認にかじを切ったことに対しても、岡田氏は「説明がほとんどない」と指摘。政府が21年にまとめたエネルギー基本計画で「可能な限り原発依存度を低減する」と打ち出したことや、原発の新増設を一貫して否定してきたことに言及し「政策を大転換した。どうしてなのか」と迫った。

 首相は「(エネ基は)原子力について、必要な規模を持続的に活用していくといった記載もあわせて行っている」と反論し、矛盾しない対応だと強調。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに「先進国はエネルギーの安定確保と気候変動対応の両立が国家的な課題という認識のもと、取り組みを続けている」とも述べ、日本の対応は「世界標準」だと訴えた。

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