2/17(金) 6:03    現代ビジネス
https://news.yahoo.co.jp/articles/94ab4fcb42171cf1faba3c2e2a8f310a1f56a5b3

 ニューヨーク市立大学政治学教授の夏明(かめい)は、10年以上前に中国で「黒社会(暴力団)」の調査を行った。彼によれば、一般的に暴力団は民間の結社から発展したものが多く、通常は政府や官僚が民衆に対して正義を提供できない時に何らかの作用を発揮したのだという。ところが、彼は現在の中国における暴力団の構成員や組織は昔の中国と比べて違いがあると指摘し、次のように述べている。


 昔の暴力団は、水滸伝であろうと「哥老会(かろうかい)」や「紅幫(ほんぱん)」、「青幫(ちんぱん)」といった秘密結社であろうと、彼らはまず初めに政府の役所に抵抗したものだった。彼らは一種の庶民の正義、あるいは暴力団の正義と呼ばれるものを提供していたが、現在の暴力団にはそのような特徴はない。それは彼らの最たる特徴が官憲と結託することにあるからである。

唐山市暴行事件
 さて、話は昨年(2022年)の6月に遡るが、後述する事件は発生直後に日本のメディアが大きく報じたので記憶されている方もおられるのではなかろうか。ちなみに、中国ではこの事件を「唐山打人案(唐山市暴行事件)」と呼ぶ。

 2022年6月10日、中国河北省東部に位置する唐山市にある焼肉店「老漢城焼烤」は深夜の午前2時半近くにもかかわらず、多数の客でにぎわっていた。入口に近いテーブルには4人の若い女性が2人ずつ対面で座り、和気あいあいとビールを傾けながら焼肉を楽しんでいた。

 そこへ突然に、店内にいた1人の男がテーブルの通路側に座る女性の背後に近づき、「よう、姉ちゃん」と声をかけて女性の背中に左手を置いた。見知らぬ男に背中を不意に触られた女性は「嫌だ、何するのよ」と拒絶したが、男は「何だ、この野郎」と応じて一呼吸入れたかと思ったら、右手でいきなり女性の頬を平手打ちしたのだった。

 一般的に中国の女性は気性が強く、うじうじしていない。頬を打たれた女性が「何するのよ」と叫んで男に組み付くと、それを見た仲間の女性がテーブルにあったビール瓶を手にして男の頭めがけて振り下ろした。ビール瓶は粉々に砕けたが、頭がよほど固いのか、男は無傷で平然としていた。

 丁度この時、店外にいた男の仲間数人が新たに店内へ乱入した。男がビール瓶で殴った女性を引きずり倒すと、仲間も加わって当該女性を足蹴にした。これを見たもう1人の女性が倒れた仲間を守ろうと覆いかぶさると、すかさず仲間の男が女性2人をめがけて椅子を投げつけた。それでも怒りが収まらない男たちは、髪をつかんで最初の女性を無理やり店外へ引きずり出すと、殴る蹴るの激しい暴行を続けたし、これを阻止しようとした女性の仲間にも暴行を加えた。

 そうこうする間に店内の誰かが公安警察に通報したと知るや、彼らは蜘蛛の子を散らすように現場から逃走したのだった。