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エネルギー供給がロシアの切り札
ロシアの侵略に1年間耐えて戦い続けているウクライナを、天も味方をしているようだ。

「欧州の暖冬がプーチンの切り札を奪っている」

CNNのウェブサイトに1月16日に掲載された記事見出しだ。

「ロシアのウラジミール・プーチン大統領が部隊にウクライナへの侵攻を命じて以来、欧州の政府を最も悩ませていた問題はロシアが天然ガスの供給を断てばどうなるかということだった。

欧州諸国は家庭の暖房から工場の動力のために消費する天然ガスの多くをロシアに頼っており、その供給を断つことはプーチン大統領の『切り札』のような手段だったからだ」

ところがこの冬に限って、その「切り札」が使えない状況になったと記事は伝えた。

今シーズン欧州では記録的な暖冬に
欧州では昨年来記録的な暖冬に恵まれ、天然ガスの供給をロシアに頼らなくても良い状況になっていたからだ。

今年の元日、リヒテンシュタインの首都ファドーツでは20度、チェコ北部のヤボルニークで19.6度、ポーランド南部の村ヨドウォブニクで19度などを記録した他、オランダ、デンマーク、ラトビアやクリミア半島を除くウクライナなどで1月として過去最高気温が観測された。

この暖かさでスイスなどのスキー場では雪不足で開場できなかったり、逆にスペインなどでは海水浴場が季節外れの賑わいになるということにもなった。

欧州連合(EU)統計局によると、昨年8月から今年1月までのEUの27カ国のガス使用量は過去5年間の同時期の平均消費量と比較して19.3%減少している。

ロシアはウクライナ侵攻後、EU諸国への天然ガスの供給をほとんど停止し、いったんはガスの供給不足と価格高騰でエネルギー危機を引き起こしていたが、EU諸国がガス消費を自主的に15%倹約する中で暖冬からガスの需要が減って価格が急落し危機を脱していた。

プーチン大統領のもくろみ外れ…
プーチン大統領としては、欧州でエネルギー危機を起こせばそれは「ウクライナが妥協しないからだ」と欧州国民の「ウクライナ離れ」を呼び起こし、支援の機運を断とうという狙いがあったことは明白だ。

しかしその「切り札」も不発に終わり、欧州国民の間で多少の「支援疲れ」があったにせよドイツが始めは逡巡して「防弾ヘルメット」しか供余していなかったのに今やレオパルト2戦車を供余するなどNATO諸国の支援体制は逆に強化されてきている。

天は「欧州の記録的な暖冬」でウクライナを救ったとも言えるわけだが、この紛争はこれからの戦いが勝敗を決すると言われる中で、天は今度はどうウクライナの味方をするのだろうか?

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

https://www.fnn.jp/articles/CX/491824