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高市氏は参院予算委員会の集中審議で答弁した=13日、参院第一委員会室

放送法の「政治的公平」に関する総務省の行政文書について、当時総務相だった高市早苗経済安全保障担当相が、安倍晋三首相との電話会談や、総務省によるレクに関する文書は「捏造(ねつぞう)」と全面否定している問題が注目されている。

総務省はこれまで、「事実かどうか確認できない」と説明してきたが、13日に参院予算委員会の集中審議がセットされたので、さすがに事実が分かったのかと期待して質疑を聞いた。高市氏と総務省官僚のどちらがウソをついたのか。

だが、委員会での総務省側の答弁は「作成者の記憶は定かではないが、レクは行われた可能性は高い」と、「内容は誰も覚えておらず、正確性は答えられない」というものだった。

これを受けて、メディアは「レクはあった可能性が高い」と速報した。だが、メモの作成者はそもそも記憶が定かでない。そのうえで、自分が「日ごろ確実な仕事を心掛けている」ことと、「上司の関与を経てこの文書が残っている」ことから、この時期に「放送法に関するレクが行われたのではないか」と考えているという、実に不思議な説明なのだ。

さらにメモの作成者もレクの同席者も内容は覚えておらず、正確かどうか言えないというのだ。つまり官僚は何も覚えていない。

これに対して、立憲民主党の福山哲郎議員は「文書が残っており、レクがあったということなら、捏造ではないですね」と高市氏に迫ったが、それは無理があると思う。総務省は文書が正確かどうか分からないと言っているのだから。

だから、高市氏も「レクがあったかどうかは確認のとりようもないが、紙に書かれている内容は自信を持って、改めて否定する」と答えた。

それにしても不思議なのは、あのレクの文書がもし事実であるなら、かなり重要な内容だ。それを記憶力がかなり良いと思われるキャリア官僚がみんなしてすっかり忘れたというのはどういうことか。

僕は官僚ほど記憶力は良くないと思うが、8年前に自分が書いた文章を見たら、少なくとも自分が書いたか、内容が正確かぐらいは断言できる。

国会では「記憶にございません」という答弁をよく聞く。1976年のロッキード事件で有名になったのだが、これは後から事実が発覚しても「ウソをついたのではない」と言い訳できるからだと言われている。

いずれにしても真実は分からないままだ。メモ作成者やレク同席者を証人喚問するとか、総務省がメモの漏洩(ろうえい)者を特定して告発するとかすれば新たな展開もあるのだろうが、どちらもやらないようだ。

このまま新事実が出なければ、今後は「印象論」の争いになるだろう。岸田文雄首相は事を荒立てたくないようだし、高市氏は「孤独な戦い」になるかもしれない。 (フジテレビ上席解説委員)

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