お風呂と言えば日本人のほとんどが好きと言えるものですが、自衛隊には「走る銭湯」とも言える車両が配備されています。

「お風呂もランドリーも走ります」誰もがうれしい。自衛隊野外入浴セットと野外洗濯セット
 自衛隊車両と言えば、戦車や装甲車、高機動車、1/2tトラックなどが有名です。
 
 しかしながら、日本ならではの車両として「走る銭湯」と言えるものも存在しますが、どのような特徴があるのでしょうか。

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のれんは男女別に用意されていることもある。少しでも和んでもらうためマスコットが居ることも。(撮影:月刊PANZER編集部)

 東日本大震災などの災害派遣では自衛隊は様々な救援活動を行いますが、自衛隊しかできないのが「野外入浴セット」による入浴サービスの提供です。

 避難場所の一画に自衛隊の濃緑色のテント(天幕)に銭湯や温泉でよく見かける「○○の湯」と鮮やかに描かれた「のれん」や「のぼり」が見られる場合があります。

 日本は湯船にどっぷりと浸かる入浴文化で、お湯のシャワーを浴びるだけでは飽き足らないという人も多いでしょう。

 単に清潔保持、疲労回復という以上に、メンタル面の効果が大きいようです。野外の入浴サービスは自衛隊にしかできない何にも代えがたい救援活動です。

 野外入浴セットもれっきとした自衛隊の装備品であり、本来は野外活動する隊員の疲労回復と士気高揚効果を目的としています。

 野外では「ドラム缶風呂」などが置かれたこともありますが入浴はままならないもので、システム化された野外入浴セットの採用が決まったのは1970年とされています。

 湯船まで含んだ野外入浴セットは日本らしい他国には見られないユニークな装備品だと言えます。

「走る銭湯」ともいえるような「野外入浴セット」は結構大掛かりで、ボイラー、揚水ポンプ、発電機などの器材はトレーラーに搭載されて大型トラックでけん引します。

 大型天幕、可搬式野外浴槽、10000リットルの貯水タンク、シャワースタンド、配管、付属品(照明、すのこ・シート・手桶・かご類など)は大型トラックに積載され、他に水タンク車やボイラーの燃料を輸送するトラックなどが編成に入ります。

 誰でも扱えるというものではなく、方面後方支援隊補給中(大)隊のほか、師団後方支援連隊や旅団後方支援隊の補給隊などが運用し、必要な人員は約7名で開設に要する時間は約6時間とされます。

 可搬式野外浴槽の容量は約3700リットルで、個人宅にある一般的な浴槽の約30倍程度の広さになるほか、他に天幕で覆われた脱衣場も設けられ、立派な大浴場になります。

 収容人数は約30人、1日に1200人が入浴可能で、浴槽のお湯はポンプでろ過器を循環させているので清潔が保たれ、ボイラーを通って加熱されています。

 上水は目的地に水道設備があればそれを利用し、断水または給水設備がない場合には水タンク車から供給します。

 展開場所の選定で問題になるのが排水処理となり、環境衛生上からもどこでも排水できるわけではなく、水道よりむしろ排水できる設備のある場所を選定するのが難しいそうです。