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ロシア軍による爆撃で大破し、無残な姿をさらすムリーヤ(2022年8月10日、キーウ州ホストーメリ) Viacheslav Ratynskyi-REUTERS

<復元に向け、すでにエンジン3発など多くのパーツが損傷機から回収された。資金難で中断した幻の2機目のムリーヤも、部品提供に貢献する可能性があるという>

ロシアの侵攻で昨年大破した世界最大の輸送機「ムリーヤ」について、破損した部品のうち使えるものをひとつひとつ回収して組み立て、復元する作業が始まった。人道的な救援活動より優先度は低いが、巨大な航空機を復元することで、被災地域の復興に希望を与える意味合いが込められている。

アントノフAn-225「ムリーヤ」は昨年2月の侵攻からわずか数日後、ロシア軍による爆撃によって起きた火災に呑まれて破壊された。作業員たちは現在、すすにまみれた部品を火災跡から取り出し、回収を進めている。現在は部品の回収と設計が進んでおり、本格的な再建作業は終戦以後になる見込みだ。

エンジンや尾翼など続々回収
米CNNは4月7日、復旧作業の詳細を報じた。記事によると、エンジニアや関連する技術者たちがアントノフ国際空港で残骸を探索し、使える見込みのある部品の取り外し作業を進めている模様だ。

アントノフ社の設計技師であるヴァレリイ・コスティウク氏はCNNに対し、焼け残っている片翼をそのまま取り外し、再建を試みる可能性があるとの見方を示している。エンジンは新型と換装し、電子機器も近代化される計画だという。

An-225は世界で1機の巨大貨物機だったが、以前は2機目の建造が進められていた。その後、資金不足で1990年代に計画が破棄されている。CNNは、途中まで建造が進んでいた2機目を基礎として、現行機から回収されたパーツを補助的に使用する可能性があるとしている。

ニューヨーク・タイムズ紙は、すでに6発のエンジンのうち3発が回収されたほか、フラップ、一部の油圧システム、ギア(降着装置)、燃料ポンプの一部、そして尾翼が収集されたと報じている。

また、同紙によるとムリーヤは、ウクライナ製の貨物機であるアントノフAn-124「ルスラーン」と部品と共有している。このほかまったく同一ではないものの、同機の部品を原型としたカスタムメイドのパーツが採用されているという。不足するパーツの一部については、ルスラーン用の保守パーツからの調達も検討されるとみられる。

大型輸送機の大破が与えた世界への衝撃
ムリーヤは世界最大の輸送機として愛されており、その破壊はウクライナ国外にも衝撃を与えた。2011年の東日本大震災時には支援物資などを乗せ、フランスから日本の成田空港へ飛来している。パンデミック中には医薬品を載せ、世界の空港を結んだ。

同機は1980年代にウクライナの首都キーウで建造され、ソ連からの独立後に大規模なオーバーホール(分解・整備・再組み立て)が施されている。エンジン6発とタイヤ32本で、640トンの最大離陸重量をサポートする。