0001きつねうどん ★
2023/04/14(金) 07:05:53.96ID:tUeGq92J「メッセージを届ける」。ラベンダー農場で再起を誓うミレソロバさん＝キーウ州ディマー（渡辺浩生撮影）
ロシアの侵略を受けるウクライナが首都キーウ近郊から露軍を撤退させ奪還を宣言してから４月で１年。残虐行為の傷痕が残る旧占領地域で住民らは日常を取り戻そうと懸命だ。露軍に一時占拠されたラベンダー農場を訪ねた。農場主は生き抜いたラベンダーとともに「復興と癒し」のメッセージを送りたいと誓った。
「この１年、一生懸命働くことで自分たちを励ましてきた」。うっすらと積もる雪にラベンダー畑が隠れていた。キーウ中心部から約５０キロ離れたディマーの高台にある「オ・ラベンダー」を営むミロスラワ・リンスカさん（３３）は振り返る。
造園デザイナーのミロスラワさんは２０１７年、夫のオレクサンドルさん（３６）と一緒に農場を開き、イチゴに加え当時のウクライナでは珍しいラベンダー栽培を始めた。最盛期の６月を過ぎると茎や花を剪定してオイルを抽出し、せっけんや化粧品に加工して販売した。
順調に成長した農場が一変した。昨年２月２４日の侵略開始直後に、露軍は約３００台の戦車や戦闘車両とともにディマー市内に到達。農場の周囲にも戦闘車や兵器が設置された。
露軍兵士は選別した住民を目隠しし市内の金属加工工場に連行し、コンクリート壁の部屋に閉じ込めた。車の提供を拒否したり、迷彩服が家にあったりした理由で住民が拘束され塹壕掘りなど労働を強制された。
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露軍が人質を閉じ込めた工場の部屋。壁に人質が書いた記録が残る＝キーウ州ディマー（渡辺浩生撮影）
オレクサンドルさんの母（６５）も、電気も暖房もない部屋に一時拘束された。約４０人の住民らが幽閉され食事は露軍の糧食のビスケットのみ。隣の部屋で拷問が行われたという。
ミロスラワさんらはキーウ南方の親族宅に避難。ウクライナ軍にキーウ全州が解放された後の４月１１日に帰還すると、イチゴ畑は激しく損傷し、ラベンダーも踏み荒らされていた。住居に寝泊りした露軍兵士は家財道具を持ち去った。
「ひとつだけ無傷で残っていたものがあったの」とミロスラワさんが指さしたのはオイルを抽出するラベンダー絞り器だ。「一番高価で大切なモノ」と、避難する前に地中に埋めていた。
再オープンした農場のカフェには当初、ウクライナ軍兵士がよく訪れた。６月の最盛期には約１０人の地域の女性らを雇った。土に触れ気持ちを集中してイチゴの実やラベンダーの花を摘み取る。ガーデニングは「人に不安やいやな思い出を忘れさせ、心の癒しに役立つ」。ミロスラワさんはその効果を実感した。
占領の傷はなかなか消えない。住民が幽閉された工場は稼働を再開したが、部屋の壁には人質が数字を掘って日付や人数などを記録した跡が残る。
工場幹部のウラジスラフ・ジューコフさん（４５）は露軍撤退直後、扉の中にいた約１５人の人質を解放した。「露軍に連れ去られた人もいた」と話す。ディマーの犠牲者数は不明だが、報道によれば約３０人の住民が行方不明となった。
再び春が農場に訪れた。ミロスラワさんは今季、ラベンダーの製品を増やし、ＳＮＳを通じたＰＲに力を入れ始めた。
「気持ちを静め、ストレスを減らし、安眠を助けてくれる」。ミロスラワさんがオイルを一滴、筆者の手首に落とすと、さわやかな香りが広がった。「ラベンダーは私たちの復興のメッセージ」。癒しを求める人々に届けたいと意気込む。
（キーウ州北部ディマー 渡辺浩生）
https://www.sankei.com/article/20230413-3S7JO6M5KVLPLCBE25N7A2YWP4/
