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『地球に落ちてきた男』続編が問いかけるもの 随所に浮かび上がるデヴィッド・ボウイの影 [Grrachus★]
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2023/04/18(火) 20:40:04.46ID:eRa2I1/v
4/18(火) 18:37   Real sound
https://news.yahoo.co.jp/articles/3a1669e3bd324353f288527898cdfcc7257b9492

 1976年の映画『地球に落ちて来た男』は、ウォルター・デイヴィスのSF小説を原作に、『赤い影』(1973年)などで知られるニコラス・ローグがメガホンを取り、今なおカルト映画として人気を誇っている。資源の枯渇した故郷の星を救うため、ある1人の宇宙人が地球にやってくる物語。ローグによる独特の映像美でつづられる、謎めいた宇宙人の美しくも悲劇的な半生は、主演を務めたデヴィッド・ボウイの存在感なくしては実現しなかったといっても過言ではない。ボウイの美貌や当時ドラッグ中毒だった彼が漂わせる退廃的な雰囲気が、「宇宙人」という役柄に不思議な説得力を与え、見る者を魅了する。

【写真】ポーズを取り振り向くデヴィッド・ボウイ

 そんな伝説的とも言うべき『地球に落ちて来た男』の続編テレビシリーズは、曖昧だった物語の細部を補完し、発展させた物語となっている。ここでは映画内容をおさらいしつつ、テレビシリーズではそのつづきがどのように展開されていったのか、そして随所に見られるボウイへのオマージュを見ていきたい。

映画版の謎を補完し発展させたストーリー
 映画『地球に落ちて来た男』では、ボウイ扮する宇宙人がトーマス・ジェローム・ニュートンと名乗り、9つの画期的な発明で大富豪となる。彼は稼いだ金で、故郷に帰る宇宙船を作ろうとしていた。しかし地球人の女性メアリー・ルー(キャンディ・クラーク)と恋仲になり、故郷に置いてきた妻子と彼女への想いで板挟みになってしまう。一方、宇宙船の建造はうまくいかず、ライバル会社に正体を知られたニュートンは非人道的な人体実験にかけられ、精神的に崩壊していく。彼の精神の崩壊に拍車をかけたのは、酒好きのメアリー・ルーが愛飲していたジンだった。ニュートンは酒に溺れ、人体実験によって失明し、故郷に帰る手段も失って絶望する。

 テレビシリーズでは、消息を絶ったニュートンを追って、彼の故郷からもう1人の宇宙人(キウェテル・イジョフォー)が地球にやってくる。のちにファラデーと名乗るようになった彼は、自身の故郷と地球の両方を救う鍵となる科学者ジャスティン・フォールズ(ナオミ・ハリス)を探し出し、ニュートンが残した10個目の特許を解読。地球のエネルギー危機をも救うことができる発明をもって、やはり宇宙船の開発に乗り出す。ここで面白いのは、映画では省略されていた宇宙人が地球の環境や社会に適応するまでが描かれていることだ。ニュートンはどこからかふらりと現れ、なぜかイギリスのパスポートを所持し、最初から英語も完璧に話していた。しかしファラデーは、そこに至るまでに幾度も困難にぶつかる。ニュートンも、もしかするとこうした過程を経て人前に姿を現したのかもしれない。

 一方で映画から踏襲されているものも数多くある。ファラデーはニュートンと同じく指輪を売って旅費に充てたり、ニュートンが作った球体の音楽再生装置が登場したりしている。また、ニュートンがテレビをずらりと並べて眺めていた理由が明かされたりと、映画だけではわからなかったこともテレビシリーズでは描かれていく。

 もちろん映画の重要人物だったメアリー・ルーも登場し、本作ではジュリエット・スティーブンソンが演じている。映画での彼女はひたすらにニュートンを愛していた。その想いはテレビシリーズでも変わっておらず、ニュートンが彼女にとってどれほど大きな存在だったのか、そして彼が消えたことが、彼女の後の人生にどんな影響を与えたのかが語られる。ニュートンと行動を共にていたときの彼女は、ヒステリックで即物的な欲望に忠実な女性だった。しかし45年が経った今、彼と出会ったことの意味を彼女なりに理解し、ニュートンと故郷を同じくするファラデーに力を貸す。こうしたキャラクターの変化は、オリジナルから長い年数を経て制作された続編の醍醐味といえるだろう。

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2023/04/18(火) 20:40:16.45ID:eRa2I1/v
随所に浮かび上がるボウイの影
 映画版がボウイの存在感なくしては成立しなかったように、テレビシリーズも彼の影響力を無視することはできなかった。各エピソードのタイトルはボウイの楽曲名となっているし、歌詞を引用したセリフもある。また、ボウイの音楽性に大きな影響を与えたジャズがニュートンのメッセージを紐解く鍵になっていたりと、そこかしこで彼へのオマージュが捧げられ、やはり“地球に落ちて来た男”とは、異星人的な異質な魅力を持ったボウイ自身だったのだと思わされる。現実でも劇中でも長い年月が経ち、ボウイも没した今、彼が演じたニュートンもまたこの世を去った設定になってもおかしくはなかっただろう。しかしボウイの存在と彼のレガシーの大きさに、製作総指揮のジェニー・ルメットは、「この物語には、トーマス・ニュートンの存在が必要だ」と考えたという。

 テレビシリーズでファラデーたちはニュートンが残したある発明を完成させ、彼がそれを作ろうとしていた目的を探っていく。ボウイからニュートン役を引き継いだのは、イギリスの名優ビル・ナイだ。飄々とした存在感を持つ彼は、つかみどころのないニュートンを演じるのにぴったりだったのではないだろうか。しかし年月を経てメアリー・ルーが変わったように、ニュートンもまた変化している。ボウイのニュートンはどこか儚げで、現れたときと同じように、いつかふわりと消えてしまうのではないかと思わせる雰囲気を漂わせていた。感情的になることもほとんどなく、なにを考えているのかわからない人物だ。ところが本作でビル・ナイが演じたニュートンは、登場した直後からファラデーを怒鳴りつけ、酒瓶片手に彼を挑発する。共同クリエイターのアレックス・カーツマンは、Entertainment Weeklyのインタビューで「映画のキャラクターの45年後を描くのではなく、全く新しいキャラクターを作り出す方が価値のあることだと考えました」と語っている。一方でこの役を演じることは、どうしてもボウイと比較されることを避けられないため、「その人自身が伝説的であり、かつボウイを真似ない俳優」としてナイがキャスティングされた。彼がボウイと面識があり、その精神を理解していることも大いに役立ったという。ナイはニュートンの現実味の薄い存在感を再現しつつも、重みのある感情を表現し、新たな異星人を生み出すことに成功してる。(※)

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2023/04/18(火) 20:40:37.90ID:eRa2I1/v
詰め込まれたメッセージ
 映画は退廃的な雰囲気のなかで、人間の業の深さや、その犠牲になった者の孤独を描いていたのに対し、テレビシリーズでは様々なメッセージを織り込んでいる。環境破壊に対する我々地球人の危機感のなさや、現状に甘んじ差別を温存する態度への批判などを、ニュートンやファラデーの故郷アンシアが辿った運命、そしてその社会システムと現在の地球を対比させながら描いていく。また、ジャスティンをはじめとするキャラクターたちは、過去に囚われながらもそれを克服し、再びアイデンティティを獲得しようと葛藤する。全10話のシリーズとしては多少詰め込みすぎなきらいはあるものの、どれも意味のある問いかけだ。

 テレビシリーズ『地球に落ちて来た男』は映画から45年後を舞台とし、そこでの出来事を踏襲しながら、新たな展開を見せた。映画は曖昧な部分や語られない要素が多くあり難解だが、テレビシリーズではそういった部分が丁寧に解き明かされ、腑に落ちるストーリーが語られる。良くも悪くもボウイの魅力を全面に押し出した映画版と違い、謎を解明する力強いストーリーが展開されるテレビシリーズは、続編とはいうものの、新しい物語として魅力的だ。オリジナルの映画を知っていても知らなくても楽しめる作品になっている。またボウイのファンであれば、散りばめられた彼へのオマージュにニヤリとしてしまうことだろう。
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2023/04/18(火) 20:42:14.79ID:eRa2I1/v
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