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会見で話す荻原博子さん=2023年5月18日、東京・永田町の衆院第2議員会館

 いまの健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに統一するための関連法案に対し、反対の声が異例の広がりを見せている。頻発するマイナカードのトラブルも背景にあるようだ。

 医師らでつくる全国保険医団体連合会(保団連)などが18日、東京・永田町の議員会館で会見し、ネットなどで計約67万人分の反対署名を集めたと明らかにした。関係省庁に提出するという。

■「弱い人ほど、社会保障からこぼれ落ちる」

 会見では、経済ジャーナリストの荻原博子さんが「介護を受ける人や障害のある人など、マイナカードの申請や管理が難しい人がいる。保険証が廃止されてマイナ保険証に一本化されたら、蚊帳の外に置かれてしまう。弱い人ほど、社会保障からこぼれ落ちる」と指摘した。

 障害者団体の家平悟さんは「介護施設がカードや暗証番号まで管理するのは、リスクが大きく難しい。そうなると、結局は障害者や高齢者が置き去りにされ、無保険にならざるをえないという状況だ」と話した。

■本人とは違う情報、7千件以上

 マイナンバーカードのトラブルは、今年に入って相次いでいる。

 マイナ保険証に他人の情報がひもづけられたりしていた事例が全国で発生。厚生労働省によると、本人とは違う情報が登録されていた問題が、7千件以上起きていた。

■署名、トラブルを受けて伸びる

 保団連の住江憲勇会長は「誤登録は氷山の一角では」と疑問を呈した。誤登録やマイナカードを使ったコンビニの証明書サービスの誤交付が今年になって相次いで明らかになり、署名数が伸びたという。

 オンライン署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」で今年3月に始まった署名には、およそ2カ月で13万筆以上が集まった。サイトの広報担当は「10万超えは、東京五輪反対の時などごく一部だ」と話す。

 署名の賛同者からは「トラブルの連続。メリットどころか不安ばかりだ」「現在なんの問題もない保険証を廃止するとは愚策」といった声が寄せられている。

 政府は「マイナンバーカード1枚で様々なことができる社会」を将来像に掲げる。保険証を廃止してマイナ保険証に一本化する動きもその一環だ。現在、関連法案の国会審議が進んでいる。(後藤遼太)

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