突然ですが、まきぐそって不自然な形をしていませんか?自然に出してもあの形にはならないと思うのですが、そうだとしたら一体誰がデザインしたのでしょうか。

友人や同僚に疑問を投げかけると、おおよその予想通り、有名な漫画の「鳥山明先生の『●ラレちゃん』では?」「いやいや、同じく大御所の楳図かずお先生の『ま●とちゃん』でしょう」と大体の方が返してきました。

そうだよな、あれは日本独自のもので、最近の表現だよなぁと勝手に思いこんでいましたが、いやまてよ。海外でトイレカフェができたときもあのシルエットだったと思い至り、調べてみることにしました。

すると意外や意外、海外でもまきぐそが描かれた図版は見つかりました。しかも銅版画で。

西洋のまきぐそ

「調香師」というタイトルで野糞をしているシュールな画。これが西洋で確認できるまきぐその絵として有名です。ベルナール・ピカールはフランスの挿絵・銅板画家。

かつて中世のフランスではトイレが発達せずみなおまるに用を足して窓の外に投げ捨てたり、宮殿では植え込みの陰で用を足していました。椅子型おまるも一般的で、椅子に穴が空いていて、脚のある場所に引き出し式の箱になっていました。

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ベルナール・ピカール(1673年 – 1733年)が描いた『調香師』

なので外の悪臭を防ぐのも部屋の悪臭を防ぐのも、自分自身のにおいを消すためにも香水が発達したと言いますから、香りを作る者から一番の悪臭の元がひねり出てくるという、皮肉めいた図版といえます。

日本のまきぐそ

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旧河本家本『紙本著色餓鬼草紙』第3段「食糞餓鬼図」

しかしこれから紹介するものはふふっと笑える代物ではなく、この世を地獄に例えたおぞましいものでした。

餓鬼とタイトルがあるように、人間の糞便を食いたくてたむろしている食糞餓鬼(じきふんがき)が描かれています。これは下々の者たちが飢えに耐えかねて、外で用を足している人たちの糞まで食らっているほどの酷い世の中だ、ということを表しているそうです。

まきぐその謎を追っていたら、思わぬ闇の深さにはまっていってしまいました。

ちなみにまきぐそは「巻き」と書きますが、あれはとぐろを巻いている物ではないとの考察も。接地面までが短い地面で特大の物をいたしますと、段階的に積み重なっていきます。概ねいきむと三回ぐらいに分けて出てくるので、ピラミッドのように積み重なっていき、それなりにあの形に近づくようです。

筆者は登山中に、それらしきものを何度かみかけたことがあります…。

ということで、今よりも外でする事の多かった昔の人たちが、その観察眼を持って自然にあのシルエットを「うんこ」だと認識していたということでしょう。

ウンコとウンチの漢字は?
ちなみに漢字はないのかというと『うんち大全』という本の和訳ではウンコに対して「雲古」という字があてがわれていました。なんとも侘び寂びを醸し出しているではありませんか。これは完全な当て字ではないかとのこと。

そしてウンチはというと、「阿吽」の「吽(うん)」からきているという説も。
中国仏教で大小便を「吽」、大小便の溜まり場を「吽置(うんち)」と呼んでおり、奈良時代に日本へ伝来し上流語として使われたそうです。

ウンコと呼ぶかウンチと呼ぶかの論争も、小さな子供のいる友人等の間で巻き起こることもありますが、ウンチの方が正統な歴史がありそうです(笑)

参考:『うんち大全』(作品社、ジャン フェクサス著)、語原由来辞典

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