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岸田文雄首相(写真左)と立憲民主党の泉健太代表

 岸田文雄首相が今国会中の衆院解散に含みを残したことを受け、与野党に14日、緊迫した空気が広がった。ブラフ(脅し)か本気か、見方が割れる中、立憲民主党は解散を誘発する可能性のある内閣不信任決議案提出に踏み切るか否かを巡り苦慮。各党は早期解散もあり得るとみて、衆院選準備を加速させる構えだ。

 「首相は選挙をやるつもりがあると感じた」。立民の泉健太代表は14日、国会内で記者団に、首相発言に関して警戒感を表明。安住淳国対委員長は「首相自ら解散風を吹かせている」と語った。

 首相は13日の記者会見で、21日までの今国会中の衆院解散について問われ「会期末間近にいろいろな動きが見込まれる。情勢をよく見極めたい」と説明。重要課題に専念するため「解散は考えていない」としてきた従来の発言から踏み込んだ。

 自民党内では「不信任案を出すなら解散するという立民へのけん制」(首相周辺)との見方が強い。石破茂元幹事長は14日、野党の不信任案提出を理由とすることについて「本来の解散の趣旨と違う」と記者団に述べ、実際に踏み切るには別の「大義」が必要だと指摘した。

 ただ、党内では「解散はいつあってもおかしくない」(現職閣僚)との声も出ている。中堅議員は「あそこまで言った以上、不信任案が出されれば、首相は引くに引けないだろう」と語った。

 焦点となるのは立民の判断だ。不信任案を提出する場合、16日に想定される防衛費増額の財源確保法案成立の前後のタイミングが有力視される。自民、公明両党の幹事長と国対委員長は14日、不信任案の処理に備えるため、16日の衆院本会議開催の準備を進めることを確認した。

 立民は選挙準備が進んでおらず、会期内解散は避けたいのが本音だ。このため、財源確保法案の成立前に不信任案を出し、解散しにくい状況に首相を置く案が取り沙汰される。ただ、この案に対しては、対決姿勢に迫力を欠くとの声が根強い。

 一方、財源確保法案の成立後に不信任案を提出すれば、首相に「解散のフリーハンド」(自民幹部)を与える形となる。立民内では「提出見送りは弱腰だ」「恣意(しい)的解散に口実を与える必要はない」と主戦論と撤退論が交錯。泉氏は記者団に「最後の最後まで検討して判断する」と語った。

 他党は選挙準備を急ぐ。日本維新の会の馬場伸幸代表は14日の党会合で「(解散)するかしないか最後まで分からない。惑わされず臨戦態勢を整え、一歩ずつ選挙に向かって歩んでいく」と強調した。

 公明党の山口那津男代表はラジオ日本の番組で、早期解散を見据えて「これから準備したい」と表明。国民民主党の玉木雄一郎代表は党会合で「(首相と立民の)神経戦が続いている。いつあってもおかしくないという緊張感を持ちながら、準備を怠りなく進めていきたい」と語った。

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