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愛知県民に愛されるラーメンチェーン「スガキヤ」の特徴は、魚介と豚骨をブレンドしたオリジナルのスープだ。味噌を多用する愛知県で、なぜ豚骨ベースのスープが生まれ、人気となったのか。経済ジャーナリストの高井尚之さんがリポートする――。(前編/全2回)

なぜ愛知県民は「スガキヤ」のラーメンを偏愛するのか
世代を問わず人気の飲食店のラーメン――。昔に比べて、最近は夏でも温かいラーメンが支持されるという。「日本3大ラーメン」は、札幌、博多、喜多方だそうだが、全国各地には「ご当地ラーメン」と呼ばれる個人店やチェーン店がある。

このうち、人口約748万人の愛知県で支持されるのが「スガキヤ」(本社・愛知県名古屋市。正式店名は「Sugakiya」)だ。静岡県から兵庫県まで260店(2023年5月末現在、グループ店は除く)を展開。うち愛知県は163店と、全店舗の6割以上が同県内に集中する。

一番人気の「ラーメン」は1杯390円(税込み、以下同)。原材料費や人件費の高騰で1000円前後のラーメンが珍しくない中、低価格路線を貫く。現代の名古屋人(名古屋文化で育った人)には「DNAにスガキヤが組み込まれている」とすらいわれる店だ。

なぜ、長年愛されるのか。名古屋めしとは一線を画す、同店の横顔に2回に分けて迫ってみた。

売り上げの2割は「390円ラーメン」
コロナ禍で外食産業は大きな影響を受けた。それまで年間売上高が約120億円の黒字経営だったスガキコシステムズ(「スガキヤ」の運営会社)も例外ではない。現在はどんな状況なのか。

「既存店売り上げは現在、コロナ前2019年比で約103%になりました。2020年度は約76億円まで落ち込んだ年間売上高も、2022年度は約96億円と回復基調にあります」

スガキコシステムズの高岡勇雄さん(営業管理部 ゼネラルマネジャー)はこう説明する。ショッピングモールなど商業施設への出店が多く、施設の休業や時短営業の影響を受けた「スガキヤ」だが、ようやく通常営業となり、客足も戻ってきた。

店の象徴が、前述した390円のラーメンだ。発売以来、庶民価格を貫く。

「『ラーメン』は、あっさり豚骨系で赤い丼に入っており、社内では通称『赤丼』と呼びます。全売上高の約2割、麺類全体に占める構成比は約4割という看板商品です」

若山昌樹さん(営業管理部 マーケティンググループ グループマネジャー)はこう説明する。岐阜県出身の若山さんは、子ども時代からスガキヤの味に親しんできたという。

実は創業当初は甘味処だった
戦後すぐの1946年に創業した店は、翌々年(1948年)にラーメンが加わり、店名が「寿がきや」となった。当時は1杯30円。1960年代には90円、76年から78年まで140円で販売した。その後も長年200円台で販売するなど、「子ども時代にスガキヤのラーメンがいくらだったかで、大体の年齢がわかる」ともいわれた。

原材料など諸経費の高騰が続き、近年は小刻みに値上げしてきたが、「スガキヤのラーメンは低価格で食べたい」も、お客が同ブランドに抱く期待値なのだ。

「スガキヤ」は甘味も名物。実は、創業当初は「甘党の店」だった。今でもソフトクリーム(レギュラー190円、ミニソフト130円)やクリームぜんざい(280円)が人気だ。

「ソフトクリームは動物性ではなく植物性油脂を使い、あっさりした味です。クリームぜんざいのぜんざいには、北海道産大納言小豆を100%使用。塩気のあるラーメンの後を甘味でシメるというお客さまも多いです」(高岡さん)

今回、名古屋市内の店を訪れて「ラーメンとミニソフト」を注文した。2品で520円。「ソフトクリームは後にしますか?」と聞かれたので、ラーメン後に食べる人が多いようだ。

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筆者撮影
スガキヤ路面店の外観。スーちゃん(イメージキャラクター)もラーメンとソフトクリームを持っている - 筆者撮影