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参加者からの質問に答える全いるちさん(左)と、小林真さん=埼玉県深谷市内で2023年8月21日、隈元浩彦撮影

 関東大震災(1923年9月1日)の混乱下で起きた朝鮮人虐殺。そうした悲劇を繰り返さないため、何が必要なのかを討議する集いが21日、埼玉県深谷市内で開かれた。

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 主催は民間団体の「県北スポーツ文化祭・深谷」。深谷女子高(現深谷第一高)出身で、食文化を伝える活動をしている在日コリアン2世の全(チョン)いるち(本名・一枝)さん(65)が基調講演した。自身の生い立ちを踏まえながら、差別体験などを語った。

 来場者からの「韓流ブームを見ると、世代が変われば民族差別の問題も解消されるのでは」という声には、「ヘイトスピーチは今も続いている。その担い手は若者たち」と悲観的な見方を示した。そのうえで、「日本の植民地政策で推し進められた創氏改名、皇民化教育で、私たちは、言語と名前を奪われた民族です。こうした事実を、いまの日本人はきちんと知っているのだろうか。朝鮮人虐殺事件も含めて、日本人が何をしたのかが、日本の教育現場で教えられていない」と指摘し、「隠している限りヘイトスピーチなどの差別はなくならない。まずはお互いを正しく知ることです」と訴えた。

 集いの呼びかけ人である同市議の小林真さんは「100年前、県北で大勢の朝鮮人が虐殺されたなか、深谷では町の朝鮮人を守った人がいた。その人は『顔がみえる関係だったから』と言ったそうです。全さんの話はその大切さを改めて教えてくれた」と述べた。【隈元浩彦】

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