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築地場外市場を訪れた外国人旅行者たち

中国政府が日本の水産物の全面輸入停止を発表
 8月24日に始まった福島第一原発の処理水放出を受け、中国政府が日本の水産物の全面輸入停止を発表、香港・マカオは福島等の水産物・生鮮食品の輸入を禁止するなど影響が出ているが、日本を訪れる外国人たちはどのような感想を持っているのか。彼らに大人気の観光スポット、築地の場外市場で実際の声を聞いてみた。

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 訪れたのは放出から3日後の27日朝。

 築地の場外市場では、仲卸が一段落した朝8時過ぎから、いろんな言語が飛び交い始める。

「テイスティ(英語)」

「マシッタ(韓国語)」

「エナッ(インドネシア語)」

 いずれも「おいしい」を意味する言葉だが、こうした状況においても、一番多く耳にする外国語は、

「クゥーコォゥ」だ。

 漢字で書くと「可口」で、つまりは中国語である。

築地の場外市場を訪れた中国人旅行客の反応は
 処理水放出について、中国の報道やSNSでは日本を非難する声が目立つ。また中国から日本へ迷惑電話が大量にかかってきていることも明らかになっている。どこまでが国民の自発的行為で、どこからが国家的な戦略なのか不明なのはいつものことである。

 そこまで激しい拒否反応ではないにせよ、ある種の「懸念」を口にしたのは、日本のとある健康食品メーカーの台湾法人に勤める台湾人男性(43)。家族とともにマグロの刺身をつまみながらこう言う。

「私は気にしてないけど、心配はしている。絶対に安全とは言い切れないじゃないですか。事実、私の勤めている会社でも、日本の健康食品というだけで問い合わせが相次いで、取引中止になった例もあります」

 ただし、こういうネガティブな声は意外と少なく、実のところ築地で出会った人々からは「気にしない」という意見も珍しくない。

「中国政府の方が怖いよ」
 並んでまで日本の海産物に舌鼓を打ちに来ている香港からの観光客はプリプリの生ガキやテンコ盛りの生ウニをすすりながらこんなことを言う。

「いつになるか分からないけど、中国でもすぐに食べられるようになると思うよ。たいした問題じゃない。怖いとも思っていないし、怖いといえば中国政府の方が怖いよ。いろんな意味でね(笑)」

 また同じく香港から来た家族連れは、43歳のお父さんが、

「魚は大好きです。日本の魚は今までも食べてきました。日本の政府を信じてます」

 と話していた。

 こういう冷静な声が多いのは喜ばしいことだろう。こんな人たちばかりならば、迷惑電話もかかってこないはず。

 ただし、お気付きの通り、冷静な受け止めを口にしている彼らは香港や台湾からの観光客。

 受け取る情報が極めて制限されており、なおかつ政府の意向で意見が大きく左右される中国本土の人々が今後どう出るかは、いまだ不透明だといえる。

撮影・西村 純

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