カギは最終列車であること
 博多18時59分発 東京行きの「のぞみ64号」といえば、東海道・山陽新幹線全線を走破する列車の最終であり、かつ最速の新幹線として知られています。

 その所要時間は4時間46分。大半の「のぞみ」が4時間57分か5時間ちょうどです。東京発 博多行きの下り最速「のぞみ1号」でも4時間52分運転ですから、「のぞみ64号」1本だけ所要時間が短いことになります。

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博多18時59分発 東京行き「のぞみ64号」(2023年8月、安藤昌季撮影)。

 その理由はまず「停車駅が1駅少ない」こと。東京~博多間の「のぞみ」は、新大阪~博多間で必ず新神戸、岡山、広島、小倉に停車しますが、「のぞみ64号」以外はさらに福山、徳山、新山口のどれかに停車するため、それだけ所要時間が長くなるわけです。

 続いて「最終列車であること」。列車本数が少ない時刻であり、追い抜く列車も少ないことから、ほかの列車に妨げられることなく運行できるため、それだけ所要時間を短縮できるわけです。

 こうしたことから「のぞみ64号」は、新幹線の定期列車としては最も速い、表定速度224km/hで運行されている新幹線です。最高速度では東北・北海道新幹線の方が速いのですが、東京~宇都宮間や盛岡~新函館北斗間で速度制限が多くあります。結果として東京~新函館北斗間で最速の「はやぶさ7・14・44号」でも、表定速度は208km/hに留まります。

 ちなみに「のぞみ64号」を上回る日本一速い新幹線は、臨時列車ですが新横浜~新大阪間の「のぞみ491号」で、239km/hです。大きな速度制限がある東京~新横浜間を走らないことで、停車時も含めた平均速度である表定速度が高くなります。

JR九州の特急を待って出発 +6分
 筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2023年8月、「のぞみ64号」に乗車してみました。ただ当日は遅延した「リレーかもめ」を待ったため、定刻より6分遅い19時5分に博多駅を出発しました。

 列車には通常「余裕時分」が設定され、多少の遅れは取り戻すことができます。しかし前述したように「のぞみ64号」は、ほかの「のぞみ」より平均12分程度速いダイヤですから、それだけ余裕時分がありません。つまり「のぞみ64号」が6分遅れを取り戻せた場合の運行速度は、「余裕時分ゼロの真の最速」となります。

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筆者はグリーン車へ乗車(2023年8月、安藤昌季撮影)。

 博多駅出発時の乗車率は、グリーン車が20%、普通車が40%程度でした。筆者はグリーン車に乗車します。遅延した「リレーかもめ」から乗り継いだので、駅弁などを買っている余裕はなく、慌てて乗り込みました。

 幸い車内販売営業列車なので、ワゴンを探しに行き「柿の葉寿司」を購入します。夕飯時に運行されている列車ということで、すぐに売り切れたようでした。

 しばらくしておしぼりが配られます。取材時は最新のN700Sで運行され、快適性がN700Aよりも向上した新型座席でした。

 スマートフォンアプリで速度を計測してみます。297~299km/h程度であり、ほぼ最高速度で走っていました。下り坂なのか、アプリの誤差なのか、山陽新幹線の最高速度300km/hを超える瞬間も何度かありました。遅延時には、ATC(自動列車制御装置)の頭打ち速度である305km/hまで出すと聞いていましたが、308km/hが計測されてびっくり。誤差だとは思うのですが。

 19時20分、小倉駅着。本来は19時14分着なので、ここでは遅れを取り戻せていません。食事をしている最中の19時53分に新岩国駅を通過します。

 そして20時4分、広島駅着。本来は20時0分着ですから、2分短い44分で小倉~広島間を走破、同区間の表定速度は262km/hに達しました。これは「のぞみ」より速い最高速度を誇る「はやぶさ」の、速度制限がない仙台~盛岡間だけの表定速度263km/hに匹敵します。

つづき
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