F-35の尾翼を赤くした理由って?
 アメリカ空軍が2024年1月中旬、非常に特徴的なF-35A「ライトニングII」の画像をインターネット上で公開して話題になっています。なんと、そのF-35Aは垂直尾翼の中央部分を真っ赤な色にしており、軍用機らしからぬ派手な出で立ちとなっていました。

 それが塗料で塗られたものなのか、それとも航空機用のステッカーを貼ったものなのかはわかりませんが、いずれにしても尾翼が赤くなったF-35Aのビジュアルはインパクトが大きいのか、驚きの声も寄せられています。

 当該機が所属するのはアラバマ空軍州兵の第187戦闘航空団で、同飛行隊が発表したメディアリリースによれば、この特別な塗装の意味は第2次世界大戦当時に活躍した「タスキーギ・エアメン」の伝統を称えたものだといいます。

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アラバマ空軍州兵のF-35A「ライトニングII」戦闘機(画像:アメリカ空軍)。

「タスキーギ・エアメン」とは、第2次世界大戦中に組織された航空部隊のことで、戦闘機や爆撃機などからなる飛行隊がトータルで8つ編成され、ヨーロッパ戦線で活躍しています。これら飛行隊はアフリカ系アメリカ人のみで構成された黒人部隊であり、その中の戦闘機は識別のために尾翼を赤く塗っていたことから「レッドテール」というあだ名が付けられました。

 タスキーギはアラバマ州の地名であり、タスキーギ大学で黒人を対象とした訓練プログラムが始まったことがその名前の由来となっています。現在もアラバマ空軍州兵として活動している前出の第187戦闘航空団は、「タスキーギ・エアメン」の伝統をいまでも受け継いでおり、同飛行隊では過去、F-16「ファイティングファルコン」戦闘機などでもイベント時などに垂直尾翼を赤くしたことがあります。

 このような塗装は「ヘリテイジ(遺産)ペイント」と呼ばれるもので、今回のF-35もその一環になります。

そんなに派手でステルス性は大丈夫?
 第187戦闘航空団の整備隊司令ブレント・アイヴィー少佐は今回のF-35のヘリテイジペイントについて、「レッドテールの伝統はアメリカ空軍全体に知られています。私たちはその遺産を忘れたくないし、航空隊員だけでなく空軍全体のために続けていきたいと思っています」と述べています。

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レッドテールのヘリテイジペイント機。上部にはアラバマの文字と州空軍のエンブレムが入れられ、中央には所属部隊を示すテイルレターと、その下には部隊名と機体番号(シリアルナンバー)がある(画像:アメリカ空軍)。

 今回、レッドテールになったF-35を見て、戦闘機に詳しい人ならひとつの疑問が沸くかもしれません。それは同機のステルス性への影響です。

 F-35はレーダーに映りにくいステルス戦闘機であり、機体表面はレーダー反射断面積(RCS)を減少させる突起部分の少ない形となっていて、さらに電波を吸収する特別なコーティングも施されています。そのため、特別マーキングで機体表面に塗装やステッカーを貼ってしまうと、それがレーダー波を反射する障害となってしまう可能性があります。

 今回のレッドテールのヘリテイジペイントがF-35のステルス性にどのような影響を与えるかについては、第187戦闘航空団のメディアリリースでも説明されておらず、正確なところはわかりません。

 しかし、このヘリテイジペイント機のステルス性に問題があっても、部隊としては許容範囲なのだと思われます。