日本低迷の元凶「ザイム真理教」と国民のための食の供給・安全を無視して暴走する現在社会の病根を暴いた経済アナリストの森永卓郎氏と東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏との対談書『国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係』(講談社+α新書)が反響を呼んでいる。同書から一部を抜粋・再編集してお届けする。

中国はツケを世界に回そうとしている
森永 中国の恒大グループがニューヨークで連邦破産法一五条を申請しましたが、これをきっかけに中国で金融危機が発生し、世界に波及するかもしれないと予想する人がいました。私もその可能性はあると思います。

日本は一九九〇年代にバブル崩壊を経験しました。山一證券と北海道拓殖銀行が破綻したのが九七年。その後、二〇〇一年からの小泉構造改革で、不良債権処理の名のもとに、残りの金融機関も一気にやられてしまった。つまり、バブル崩壊の最初のきっかけから、金融システムの破綻まで一〇年近くかかる。中国でも同じように進むかもしれない。

バブル崩壊後、小泉構造改革によって、日本の貴重な資産が二束三文で外資に売り飛ばされた。中国はこの流れを徹底的に研究してきたはずなんです。

中国は恒大グループを財政出動で守ろうとしている。誤解されやすいですが、恒大はまだ破綻していません。でもアメリカで連邦破産法一五条を申請したということで、外資が借金のかたに恒大グループの資産を勝手に売り飛ばすことはできなくなった。

要するに、中国はツケを外資に回そうとしているんですよ。日本と違うやり方をしていますが、うまくいくかどうかはわからない。ただ、世界経済にも危機が波及するのは間違いないでしょう。

そうした中、気がかりなのは日本がますます対米従属の度を強めていること。岸田政権の防衛費倍増方針だって、バイデン大統領自身が「俺が岸田を説得した」と言っています。

私はシンクタンク勤務時代に、当時の日米構造協議のお手伝いをしていました。下っ端だったんで、交渉の中身には携わっていないんですが。

そのとき、アメリカのカウンターパートが私にこう言ってきました。「なぜ日本はなんでもアメリカの言いなりになるんだ? 何も主張しなければどんどんやられちゃうぞ」と。むしろアメリカ人のほうがそう言っていたんです。

都合のいい日本人
森永 私は小学校一年生のときはアメリカの公立小学校に通っていました。四年生時にはオーストリアのウィーン、五年生のときはスイスのジュネーヴで過ごしました。

欧米の学校って、黙って聞いているだけの人間には存在価値を認めてくれないんです。先生が言ったことに反論しないとダメ。だから授業が常にディベートみたいになるんですよ。

一方、日本人は言われたことに口答えすると叱られる。なんでもはいはい聞く子どもがいい子とされやすい。

そういう文化の違いも込みで考えると、日米構造協議でも、異常なほどの対米従属をしていると思われるんです。アメリカにとって「都合のいい国」になってしまっている。

いま日本人の間には、岸田政権、自民党への不満が溜まっていると思います。ただ、野党がだらしないというか、立憲民主党がひどすぎるせいで政権交代に至らない。

日本維新の会が伸びているので、いずれ選挙で第一党になる可能性もある。ただ、維新は維新で、庶民の生活なんて考えていないように見える。むしろ、弱肉強食思想の集団じゃないかと。