https://image-ej.alc.co.jp/images/lTAB27saLFtWIzBK4LG.webp

「イギリスの食事ってまずいんでしょ?」と聞かれたときの返事は・・・
長くロンドンに暮らしているが、日本の友人知人から聞かれることは来英当初から現在まであまり変わらない。

「イギリス人は紅茶ばかり飲んでいるの?」→答え「確かに紅茶をよく飲むけれど、コーヒーも大好き」
「アフタヌーンティって毎日するの?」→答え「しません」
「イギリス人男性って、皆さん紳士(ジェントルマン)なんでしょ?」→答え「そんなことありません。マナーの悪い人もたくさんいます」

日本人のイギリスに対するイメージは基本悪くないものだ。「紅茶」「紳士の国」についてはロンドンのカフェ文化やイギリスの風習なども加味して話すことが必要だが、皆がそれなりに納得できる答えをすらすら話せるぐらいには鍛えられている。

「コーヒーの町」でもあるロンドン。おいしいコーヒーが飲めるカフェがたくさんある。
しかしこの20年、もっとも聞かれた「ある質問」については、何度聞かれても慣れることがない。あの手この手で「どうしたら分かってもらえるだろう?」と考えあぐね、どれだけ言葉を尽くしてもまだ足りない気が毎回している。

その質問とは、「イギリスの食事ってまずいんでしょ?」というもの。

20年も暮らしているので時期と共に私の答えも変遷はしているが、現在は「いえそんなことないんですよ。おいしいです」とまずはきっぱりと言い切ることにしている。

「フィッシュ&チップス」だけじゃない
「そうなの、まずいのよ」という答えを期待していた人々は、私の「おいしい」という答えに意表を突かれ、皆一様に驚く。そして「フィッシュ&チップス以外にイギリスにおいしいものってあるの?」と、不思議そうな顔で質問が続く。

イギリスが世界的に「まずい国」として知られていることはもちろん私も知っているし、イギリス人も皆知っている。当コラムに何度も登場している、近所に住む友人のP君(イギリス人男性)と1度この話をしたことがある。

「旅行先で誰かと知り合うたびに、『イギリスにこんなにおいしいものはないだろう』的なことを言われちゃうんだよねえ。確かにイギリスは世界的に『まずい国』として有名だけど、あんまり言われると『なんだかなあ』って気にもなるよね」

パブでサーブされるメニューの定番「フィッシュ&チップス」。
「毎度毎度『フィッシュ&チップス』の話をされるのもな~とも思うよ。フィッシュ&チップスは確かにおいしいよ。でも全イギリス人が毎日フィッシュ&チップスを食べてるわけじゃないのに」

そんなことを苦笑いしながら語っていた。

P君が言うように、フィッシュ&チップスはどこで食べても外れなくおいしい。一口に「フィッシュ&チップス」といってもどの町にもあるテイクアウト専門の小さなお店で買えるものから、ガストロパブ(食事もできるパブ)やレストランでサーブされるやや高級なものまでいろいろあるのだが、そのどれも外れなくおいしい。ビール入りのバッター液(衣)で揚げた白身魚(フィッシュ)と厚切りのフライドポテト(チップス)、その両方が熱々で提供されるのがフィッシュ&チップスの身上だ。テイクアウト店では、カウンターに備え付けのモルトビネガーを魚にもポテトにもじゃぶじゃぶかけ、レストランではレモンを上品にしぼり、好みで塩を振りかけて食べるのが流儀。もうもうと湯気が立ち上り、やけどに注意しながらサクサク&ほろほろの身をほうばる。私も大好きな1品だ。

これは割と小ぶりなサイズ。レモンの表面に焦げ目がついていて香ばしさもプラスしてある。
しかしそれだけではないのである。他にもたくさんたくさん、おいしいものがあるのだ。

つづき
https://ej.alc.co.jp/entry/20240328-london-stories-16