東電、遠い利益目標 競争力低下、提携戦略描けず 東日本大震災から13年
3/10(日) 7:08配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/d19c28ffaa0619550731a412df4563e625a965cf

 東京電力福島第1原発事故を引き起こした東日本大震災から11日で13年となる。

 東京電力ホールディングスはこの間、「福島への責任貫徹」を掲げ、他電力との火力発電事業の統合といった経営改革を進めてきた。しかし、小売り全面自由化で競争力が低下したほか、新たな事業提携戦略を描けず、利益目標の実現には程遠い状況が続く。

 2012年7月、政府は東電に1兆円を出資し、議決権の50.1%を掌握した。賠償支払いや電力の安定供給のため、破綻処理ではなく実質国有化を決定。賠償費用は「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が政府から交付された国債を原資に肩代わりした上で、主に東電が返済する枠組みを構築した。

 震災後の東電の事業は「福島事業」と「経済事業」に大別される。原発事故に伴う賠償・復興、廃炉を進める福島事業では、処理水の海洋放出を昨年8月に開始。賠償金などの支払総額は11兆円を超えた。被災地復興は道半ばであるものの、経済産業省幹部は「もし東電を破綻処理していたら(状況は)もっとひどかっただろう」と賠償・廃炉スキームが一定程度機能したと強調する。

 一方、福島事業の原資となる経済事業では稼ぐ力は向上せず、原発再稼働に望みをつなぐ状況が続く。柏崎刈羽原発(新潟県)が再稼働した場合、年1100億円の収支改善効果を見込むが、再稼働に不可欠な地元同意を得るのは容易ではない。

 東電は、賠償と廃炉を合わせて年5000億円程度の費用を確保する目標を掲げるが、17〜22年度に捻出した額の年平均は約4000億円だった。除染費用は、政府保有の東電株の売却益を充てる。具体的には、中長期的に年4500億円規模の純利益を計上する企業となることで、東電の株価を1500円に高め、4兆円の売却益実現を目指す。だが、純利益の水準は程遠く、株価も目標の半額にとどまる。