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2021年10月23日 6時0分スポーツ報知

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菅直人元首相(左)と長島昭久氏


 東京18区は、かつて民主党で行動を共にしていた自民党の長島昭久元副防衛相(59)と立憲民主党の菅直人元首相(75)が、敵味方に分かれて激しい「長菅戦争」を繰り広げている。民主党政権時は、菅内閣で防衛政務官を務めた長島氏。自民党の土屋正忠元武蔵野市長(79)からバトンを受け継ぐ形で、東京21区から「国替え」して18区から出馬した。選挙戦は事実上の一騎打ちの様相になっている。

 公示日の19日午前、図らずも2人が出陣の地に選んだのは、府中市にある大国魂神社の大鳥居前だった。平日も多くの人でにぎわいを見せる場所で、菅氏は手を合わせ必勝を祈願。東日本大震災時の首相だった際に掲げた「原発ゼロ」を打ち出し、「もう一度、政権奪取をしようではありませんか!」と声を張り上げた。

 菅氏はこれまで、自民党の土屋氏と5度の「土菅戦争」と呼ばれる激戦を繰り広げてきた。2勝2敗で迎えた17年衆院選では、約1000票の僅差で菅氏が勝利。1980年の初当選から40年以上にわたり、「政治家として鍛えられた場所」で強固な地盤を築く。

 知名度は既に十分だが、公示日前から「本人」と書かれたタスキをかけ「声をかけていただくことがありがたい」と謙虚な姿勢も。その裏には「長島氏の存在もちらついているはず」と立民関係者は明かす。公開討論会では舌鋒(ぜっぽう)鋭く、長島氏に「なぜ18区に移られたのか、きちんとお答えいただきたい」と要求。菅氏と共に市民運動を行ってきた伸子夫人は「政治家は国民に信じてもらわなければできない仕事。信じられない人を18区から送らないでほしい」と断じる。菅陣営の府中市議の稲津憲護氏は「年齢的にも潮時という話も出ていたが、菅さんも今回は“最後のお願い”と銘打っている。強い思いで戦っている」と話す。

 一方、選挙区を替えて初陣となる長島氏は、選挙カーの使用をやめ、徹底した“ドブ板”で臨む。もともとは外交安全保障を重視する保守政治家。民進党(旧)時代に共産党との共闘路線に疑問を感じ、17年に離党。19年に自民党に入党した。

 だが、昨年から猛威を振るった新型コロナウイルスが直撃し、有権者と触れ合う機会は激減。長島陣営の小金井市議・遠藤ゆりこ氏は「知名度が足りない。正直言って、現状は不利な立場」と危機感をあらわにする。

 自民党本部は東京25選挙区のうち、18区を最重点地区に位置づける。7月の都議選で、自民は8議席増の33議席にとどまり、党内では都市部での自民離れを懸念する声が高まっている。党は野党の象徴でもある元首相に狙いを絞り、河野太郎広報本部長や菅義偉前首相が応援に入った。長島氏は約4時間、マイクを使わずに有権者の声をひたすら聴く独自の戦い方を展開。「相手は元首相。こちらは著名な人を呼ぶし、開票日までにどれだけ長島の顔と名前を知ってもらえるかが鍵」(選対関係者)。同区からは無所属新人の子安正美氏(71)も立候補。熾烈(しれつ)な戦いは最終盤まで続く。(増村 花梨)

 ◆東京18区(武蔵野市、府中市、小金井市)

長島 昭久59 自民前〈6〉

子安 正美71 無新

菅 直人75 立民前〈13〉

※敬称略、届け出順。〈数字〉は当選回数。年齢は31日の投開票日現在