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毎日新聞 2021/10/24 17:00(最終更新 10/24 17:00) 有料記事 3012文字




 新型コロナウイルスの感染の「第5波」が収束しつつある。世界では再拡大する国もみられるが、日本ではなぜ急激に感染者が減ったのか。冬場に向けてリバウンド(感染再拡大)が懸念される中、政府の分科会メンバーで、感染症対策を政府に助言してきた国立病院機構三重病院の谷口清州院長に、その理由と求められる今後の対策について聞いた。【矢澤秀範】

第5波急減 「ワクチンが一番の要因」
 ――新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増えた今夏の「第5波」が収まってきました。その要因は何でしょうか。

 ◆新型コロナウイルスが第5波で急拡大したのは、地域で感染源がたまってきたためです。その結果、地域のいろんなところで感染が伝播(でんぱ)し、その連鎖が続いたと考えられます。今になって感染が急激に抑えられたのは、もちろんいろいろな要因が複合しているのですが、ワクチンが一番だとみています。第5波が急減したのは、感染者が急増したのとちょうど同じタイミングで、コロナのワクチン接種率が急速に増えたからでしょう。コロナワクチンは、接種してしばらくは抗体価(抗体の量)がとても高く、非常に高い感染予防効果があります。マスクをして行動も自粛するなど、ワクチン以外の対策も国民はしっかりやっていました。その相乗効果も大きいです。

 ――緊急事態宣言が解除されるなどして、人の流れは増える傾向にあります。冬場に向かって再び感染者が増加する可能性はありますか。

 ◆地域に感染源はまだ存在しており、ゼロになったわけではありません。しかし、ワクチン接種が進んでいるのでしばらく余裕はあります。接種率が9割を超えれば、第5波のような大きな流行にはならないと思います。ただし、先行して接種を始めた医療従事者や高齢者らの抗体価は落ちてきます。感染しても重症化は少ないものの、仮に感染者が多くなれば、それに比例して重症者も出るので、第5波のように医療が逼迫(ひっぱく)する問題が出てきます。

 ただ、統計を見れば分かりますが、冬季はコロナに限らず肺炎によって亡くなる人が増えます。インフルエンザなどが流行することも考えておかなければなりません。現状では、ワクチン接種を淡々と進め、マスク、手指衛生、ソーシャルディスタンスなど基本的な感染症対策を取り、そして必要な時はきちんと検査をすることです。今後どうなるか分からないわけですから、患者発生状況をきちんと把握できるような体制と柔軟な医療体制を整備しておくことです。

政府の対応「戦略と枠組みが不明確」
 ――今後、ワクチン接種が進み、治療薬も飲み薬のタイプなどが出てくる見込みです。新型コロナについて、感染症法上の扱いを軽くしてはどうかという議論も出てきそうですが、先生はどうお考えですか…

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