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毎日新聞 2021/11/1 21:36(最終更新 11/1 22:06) 979文字




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野党共闘が実現したが、小選挙区で敗れ支持者に頭を下げる立憲民主党の伴野豊氏(中央)=2021年10月31日午後11時55分、黒尾透撮影

 単独過半数を確保するなど自民が全国的に堅調ぶりを見せた今回の衆院選は、「民主王国」と呼ばれた愛知県でも例外ではなかった。自民が前回衆院選より3増の11議席を獲得したのに対し、立憲民主、国民民主の旧民主系勢力は前回より3減の4議席にとどまった。自民に対抗するための野党共闘は機能しなかったのか。立憲関係者は「共闘は『両刃の剣』」と指摘する。

 「何とか差しきりたかった。本当に申し訳ありません」。10月31日の開票日深夜、愛知8区の立憲元職、伴野豊氏(60)は深々と頭を下げて敗戦の弁を述べた。当選した自民前職、伊藤忠彦氏(57)との差はわずか1065票。野党共闘が実現し、6回目の対決で初の一騎打ちだった。比例復活を果たしたものの伴野氏は「私の力不足」と笑顔はなかった。



 愛知は全15選挙区のうち10選挙区で共産が候補擁立を見送り、立憲や国民と候補者を一本化した。過去の民主系候補の得票と共産系を合わせると勝ち抜けると見込んだが、結果は6敗で多くが僅差で競り負けた。

 「共産がついたことで一定程度入れてくれた人はいると思うが、それ以上に逃げたとみないと(6敗という)この数は説明しにくい」と連合幹部は見る。背景について立憲県連幹部は「過去の選挙もそうだったが、愛知は裕福な県で、変わりたくない、変わると自分の生活を脅かされるような恐怖感を感じる人が多い。非常に保守的。だから(革新の)共産に引いてしまう」と地域特性を指摘した。



 自動車産業が盛んな愛知は労働組合が選挙に力を持ち、労組を束ねる連合の影響力は大きい。「立憲と共産の接近を警戒する連合に配慮し一枚岩になりきれなかった」と話す陣営関係者も。立憲県連の塚本久幹事長は「共闘についてもう少し議論をした上なら違ったかもしれないが、いきなりだった」と述べ、衆院解散から投開票まで17日間という戦後最短のスピード選挙に恨み節をこぼす。

 対する自民は野党側のこうした揺らぎを徹底的に攻めた。応援に駆けつけた麻生太郎元首相は街頭演説で「立憲共産党」と連呼。一方で強固な支持基盤を持つ公明との関係を深め、候補は街頭で「比例は公明党」と繰り返し、組織固めにまい進した。



 愛知という土地柄で「民主王国」の再建はあるのか。来年に参院選を控える中、野党は今回の結果を踏まえ、戦略の練り直しを迫られている。【太田敦子、高井瞳】