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毎日新聞 2021/11/2 20:58(最終更新 11/2 21:55) 1317文字




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熊本2区で当選確実の報を受け、万歳する西野太亮氏(中央)=熊本市南区で2021年10月31日午後8時38分、栗栖由喜撮影

 10月31日投開票の衆院選では、無所属の当選者10人のうち4人が九州の選挙区からだった。過去に郵政選挙(2005年)などで自民系の無所属候補が多数出馬したことはあったが、過去4回の衆院選で九州の無所属当選者は0〜1人だった。識者は「野党が自民不満層をすくい取れなかったことの証左ではないか」とみる。中には自民入りの意向を示している当選者もおり、動向が注目されている。

 「自民党でお世話になりたい」。熊本2区で当選した無所属新人、西野太亮(だいすけ)氏(43)はそう公言して選挙戦を戦った。相手は当選16回の自民前職、野田毅(たけし)氏(80)と野党が候補を一本化した共産新人。事実上の保守分裂一騎打ちで、西野氏が野田氏に約5万票の大差をつけて初当選を果たした。共産新人は供託金没収ライン(有効投票総数の1割)にも届かなかった。



 大勝した西野氏は「以前から自民党にお世話になりたいと言っている。丁寧に話し合いながら進めたい」と改めて自民入りを目指す考えを表明。これには選挙中、西野氏に激しく反発してきた自民党県連も「世代交代の流れがあった。我が党の支援者が西野さんを選択した事実は受け止めないといけない」(前川收=おさむ=会長)と軟化せざるを得なかった。

 福岡9区では、かつて旧民主党の福岡県連副代表などを務めた緒方林太郎氏(48)が無所属で立候補。自民前職と共産元職を破って4年ぶりの国政返り咲きを果たした。選挙前は複数の野党から「うちから出ないか」と声がかかったというが、前回、希望の党公認で出て敗れた経験から「気乗りしないものには乗らない」と無所属を貫いた。



 こうした経緯から旧民主系の立憲や国民とは距離を置いており、当選後は「全国の苦楽を共にした仲間と話したい。あらゆる可能性を考えていく」と話すなど自民党や保守系会派入りも否定していない。

 鹿児島2区では、前鹿児島県知事の三反園訓(みたぞのさとし)氏(63)が「保守系無所属」を掲げて立候補し、自民前職と共産新人を破った。16年の知事選は脱原発を掲げ、野党の支援を受けて当選。しかし再選を目指して落選した20年の知事選では一転、自公の推薦を受けていた。



 三反園氏は自民入りを望んでいるとみられるが、自民党鹿児島県連の森山裕会長は1日の記者会見で「対立候補として出られた方が自民党に(追加公認を)申請することはないと思っている」と不快感をあらわにした。

 大分1区で自民、共産などの新人4人を破って6回目の当選を果たした吉良州司氏(63)は連合大分の推薦を受け、立憲の国会議員の応援も受けた。当選後については「新しい固まりを作ったり、政党に所属したりすることもあり得る」とし、明らかにしていない。



 それぞれ事情は異なるが、無所属候補が当選した選挙区では自民前職や自民に対する批判票がありながら、野党が議席に結びつけられなかった。熊本大の伊藤洋典教授(政治思想)は「新型コロナウイルスの影響で多くの人が困窮する中、効果的な政策を打てない自公政権に疑問を抱いている人は多い。そうした不満層を取り込めなかった野党のふがいなさが背景にある」と話す。【城島勇人、足立旬子、白川徹、石井尚】