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2021年11月4日 6時0分スポーツ報知

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コロナ後遺症外来を設立した平畑光一院長(ヒラハタクリニック提供)



 今月1日、全国の新型コロナウイルスの新規感染者が昨年6月以来の2ケタを記録するなど急激な改善が進む中、いまだ増加傾向にあるのが、後遺症に悩む人々の数だ。東京・渋谷区のヒラハタクリニックでは、昨年10月に「コロナ後遺症外来」を設け、夜中まで診療にあたる。平畑光一院長(43)は「10代がすごく寝たきりに追い込まれている」と、重症化しないとされてきた若者の後遺症に対して警鐘を鳴らしている。

 コロナ後遺症は、頭痛や発熱といった風邪と似た症状が出ることもあるため「もしかしたら、コロナ後遺症かも」と気づくには、時間がかかることもある。平畑氏は主な症状に、息苦しさや気分の落ち込みなどを挙げ「中でもけん怠感を感じる人が多く、症状も強い。仕事ができなくなってしまう人で多いのは思考力の低下(ブレインフォグ)です。文字が読めない、画面が見ていられないといった症状が見られます」と説明。同院の患者のうち、94%がけん怠感の症状を訴えているという。

 感染しても重症化するリスクが低いと言われている若者も、後遺症は例外ではない。学校に通えない日々が続き、現役受験を諦めざるを得ないケースもある。

 「あまり知られていないが、10代がすごく寝たきりに追い込まれている。若い人は大丈夫と思いがち。コロナを甘く見てはいけません」。後遺症は体に負担がかかると悪化すると言われているが、10代の患者は周囲の目を特に気にする傾向がある。無理をして通学や散歩に出かけ、翌日にはベッドから動けなくなることも症例としてあるようだ。

 もし、後遺症が出てしまった場合はどうするか。平畑氏は治療過程において、家族や周囲のサポート、精神面のケアが非常に重要だと指摘する。「後遺症で亡くなることはないけれど、自殺したいと思う人はかなり多いのが現状。『何でもコロナのせいにするな』、『甘えるな』などの言葉をかけられ、悩む患者さんが目立ちます」と危惧している。

 日本でも、後遺症外来を設ける病院は少しずつ増えている。「治療の質を向上させる努力が必要。そして、社会的周知はまだ足りていないと感じます。電車でマスクをしていない人、飲み歩く人がいるのが現状。家族も巻き込んでしまうんだよという事を伝えたい。感染者が減少すれば、後遺症も少なくなると胸をなで下ろすことはできません」と平畑氏。世界的にコロナに関する研究が進み、今後新しい治療法や治療薬が出てくる中で、後遺症に対する治療の重要性を強調した。(坂口 愛澄)