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毎日新聞 2021/11/4 12:41(最終更新 11/4 12:41) 551文字




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(写真はイメージ)=ゲッティ

 量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所や大阪大などの研究チームは、がんをたたくアルファ線を放出する元素の同位体「アスタチン―211」を、がん細胞に選択的に届ける新たな方法を開発したと発表した。がん細胞のみを狙い撃ちすることができる治療薬の開発につながり、間もなく治験も開始されるという。

 同機構によると、アスタチン―211が放出するアルファ線は、細胞に与えるエネルギーが大きいが、飛ぶ範囲が細胞一つ程度の大きさと同じ数十マイクロメートルのため、がん細胞に取り込まれると、周辺の正常細胞を傷つけずにがん細胞のみを攻撃できる。だが、不安定で体内で酵素に分解されてしまい、がん細胞にあまり吸収されずに胃などの臓器に集積するため、副作用が生じる懸念があった。



 同機構などは、構造を変えたアスタチン―211の化合物を合成。がんに選択的に集積する抗体と結合させることで、分解されずにがん細胞を攻撃する方法を開発した。間もなく大阪大で甲状腺がんの、同機構と福島県立医大で難治性がんの褐色細胞腫の治験をそれぞれ開始する。

 同機構は「より有効で安全な核医学治療への応用が期待される。甲状腺がん以外にも乳がん、大腸がんなどに集積する抗体と結合させることで、治療したいがんに応じた選択ができる」としている。【庄司哲也】